-欧米で愛用者が増えている「月経カップ」、でも本当に大丈夫?-

2019.07.23

新しいタイプの生理用品として日本でも注目されつつある「月経カップ」。しかし、問題点も見えてきました。

 

 

【まとめ】

 

☆欧米発の「月経カップ」。生理用ナプキンやタンポンに代わる生理用品として、注目を集め始めています。

 

☆人気の理由は、使い心地の良さ、使い勝手の良さ、経済性。タンポンより衛生面で優れるという見方もありますが・・・。

 

☆徐々に普及しつつある中で見えてきた不安材料も。衛生面や使いこなす上での懸念が指摘されています。

 

 

「月経カップ」ってどんなもの? どうやって使うの?

 

 

先日は、生理軽減と避妊を可能にする器具「IUS」こちらについて解説しました。今回は、注目の生理用品「月経カップ」(経血カップ)をご紹介します。

 

 

(Shutterstock/Elizaveta Galitckaia)

 

 

月経カップは、生理用ナプキンやタンポンに代わる生理用品として米国で開発されました。主にシリコンで出来たカップを膣の中に装着して、月経血をためるようになっています。(ただし日本では「経血を吸収処理」するものを「生理処理用品」として基準が定められているので、法的には生理用品の扱いではありません)

 

 

インターネットで入手する人が多いようですが、大きさも様々なものが売られていて、自分に合ったサイズを選ぶことが大事。様々な会社から数百種類は販売されています。大きさは、身長でおおよその膣の内径を推測し、あとは出産経験の有無と、経血量の多い少ないで判断します。それに月経カップの固さと持ち手部分のバリエーションがあります。販売サイトでは選ぶ際の目安の表などもあります。

 

 

使い方は、先日のあさイチでも実物で説明していました。経血カップを手で折りたたんで小さくし、膣に挿入したら手を緩めれば、弾力性で元の形に戻って膣にフィットします。タンポンと同じで、挿入後は正しく使えていれば異物感なく過ごせるとのこと。

 

 

メルーナジャパン

 

 

耐久性は約10年と言われています。

 

 

便利で使い心地がよく、経済的。安全性も?――支持される理由とは。

 

 

欧米で人気の理由は、いくつかあるようです。

 

 

●繰り返し使えてゴミも出ず、経済的。

 

 

生理用ナプキンは、高分子ポリマーを内包したプラスチックやコットンで出来ていて、さらに包装材やテープ類が使われています。タンポンも、本体に加えてプラスチック製のアプリケーター、包装材が付属しています。ゴミも多くなりますし、交換して使うために複数持ち歩く必要も出てきます。

 

 

 

 

その点、月経カップは自分で洗って、繰り返し使用できます。外出中もほとんど取り外す必要がないので、ゴミも荷物もゼロ。一度購入すれば何年ももつので、タンポンやナプキンを何十年買い続けることに比べると非常に経済的でもあります。

 

 

●生理用ナプキンと違って蒸れず、かぶれない。

 

 

生理用ナプキンは、昔に比べてだいぶ使用感が改善されたとは言え、その性質上、どうしても一定時間はデリケートゾーンと接している状態になります。ある調査では、女性の7割が生理中にデリケートゾーンのかぶれやかゆみを経験しています。

 

 

ユニ・チャーム調べ 2017年8月、回答者数:4,949人)

 

 

ナプキンを使っていると、湿った状態が続きます。さらに、ナプキンに残った月経血や汗などが肌を刺激して、かぶれてしまうのです。

 

 

月経カップなら、膣の内部にセットするので、肌にはいつも通り下着が触れるだけ。そのためかぶれないと評判のようです。

 

 

●タンポンと違って繊維製でないので、細菌感染リスクが少ない?

 

 

タンポン繊維で出来ていて、なおかつ膣の中に長時間入れたままにして使用するため、ナプキン以上に、黄色ブドウ球菌などの雑菌が繁殖しやすいという問題点があります。

 

 

(黄色ブドウ球菌:東京都健康安全研究センター

 

 

この雑菌は、常在菌として普段から私たちの体のあちこちに棲みついているもの。通常は体の免疫力や仕組みによって、勢力がバランスよく抑えられ、体への危険なく過ごせています。

 

 

ところが、タンポンは通常ならおりものや月経血と共に排泄される雑菌まで、月経血と一緒に吸収し、ため込んでしまいます。その状態で膣の中に、長ければ8時間程度も入ったままに・・・。体の安全システムを邪魔してしまう結果、ごくまれに「毒素性ショック」を引き起こすこともあります。普段は比較的おとなしい雑菌も、集まって大きな勢力となり、毒を放出するのです。

 

 

実際に昨年、修学旅行中タンポンを使用していた10代の米国女性が、黄色ブドウ球菌による毒素性ショックで亡くなったことが伝えられました(こちら)。

 

 

タンポン自体は衛生的に、安全に作られていても、吸収した血液と膣が長時間触れた状態になります。増殖した雑菌とも触れ合ったままの状態になるのです。一方、月経カップでは、溜まった経血と膣はシリコンなど雑菌を通さないカップで隔てられています。その分、安全性が高いと考えられているようです。

 

 

インテグロ

 

 

でも、ちょっと待って。衛生面の心配や使用上のトラブルも。

 

 

とても便利で使わない理由はないようにも見える月経カップですが、懸念すべき点もいくつかあります。ナビタスクリニックの川原麻美医師(産婦人科、現在は産休中)は、以下のようなリスクを指摘します。

 

 

●自分で洗って管理し、素手で挿入し、長時間入れっぱなしにするので、雑菌が繁殖しやすい。

 

 

月経カップは最長11~12時間、膣内に入れっぱなしでよい、とされています。これは使う側にとってはとても便利ですし、それを理由に使っている人は多いことでしょう。しかし、タンポンと材質が違うと言っても、大きな問題は、基本的に手で挿入するです。

 

 

タンポンの場合は、アプリケーターとよばれるプラスチック素材に包まれている製品が多く、摩擦を減らして挿入しやすくするとともに、タンポン本体を直に手で触らずに挿入できるようになっています。

 

 

一方、月経カップは手で折りたたんで挿入します。問題は、手にも黄色ブドウ球菌などの常在菌がいること。挿入時に月経カップに常在菌やその他の病原菌が付いてしまう可能性があるのです。黄色ブドウ球菌であれば、特に化膿部分や絆創膏を貼りっぱなしにした部分などに多くいることが知られています。指先に傷がある人は、さらにハイリスクですね。

 

 

しかも、洗って繰り返し使えるのが魅力ですが、洗い残しがある可能性もあります。さらに、乾かす際や保管の際に素手で触ってしまえば、やはり雑菌がついてしまいます。

 

 

 

 

そうして、完全に衛生的とは言えない月経カップが、10時間以上もの長い間、体温(37℃程度)の膣と触れ合うことに。実際、インターネットなどでも、タンポンと同じようなショック症状に見舞われた、という体験談が見られました。

 

 

●長年の使用で細かな傷などがつき、雑菌が入り込みやすくなる心配。

 

 

月経カップは、生理の使用期間中には、石けんなどで洗って管理するのが基本です。ただ、生理が終わったら、煮沸あるは薬剤で消毒して保管することになっています。

 

 

確かにそうすることで長期的にも、ある程度の清潔は保てます。ただ、シリコンなどの素材であっても、長年使用し続ければ、目に見えない小さな傷が増えていくもの。汚れや雑菌が入り込みやすくなると考えられます。

 

 

煮沸や薬剤で毎回リセットされるとはいえ、生理期間中は手洗いでよいとされています。それで十分に細かい傷に入り込んだ汚れや雑菌を除去できるのかどうか・・・。

 

 

製品のサイトなどで使用方法等を確認すると、「気になる匂いや汚れ」が出てきたら、「石けんでゴシゴシ洗っていただくのが効果的」と勧めているものも。ゴシゴシ洗えばやはり傷はつきそうですし、そもそも通常のお手入れでは「気になる匂いや汚れが」出る可能性がある、ということ。気になるほどの匂いや汚れが出ている状態であれば、雑菌等の繁殖も進んでいると考えられます。

 

 

●サイズ選びや挿入の仕方に失敗して、取り出せなくなるトラブルも。

 

 

インターネットで調べると、自分で月経カップを取り出せなくなってしまった、というトラブルも散見されます。

 

 

あるケースでは、そもそものサイズ選びもうまくいっておらず異物感がすごかったそうですが、無理矢理に挿入した際に、月経カップの内側が真空状態になってしまったとのこと。そのために吸引されるかたちで奥へ奥へと月経カップが入ってしまい、気づいた際には自力で取り出せない状態だったそうです。指ではもちろん、ネットで調べてスプーンを使ってみても無理。産婦人科に駆け込んでようやく取り出してもらえた、とのこと。

 

 

 

 

もともと欧米の製品が主流なので、サイズ感の違いなどもあったのかもしれません。また、コツをつかめないうちは、挿入の失敗もありそうですね。

 

 

以上を踏まえ、月経カップに興味がある方も、リスクを十分に知った上でなお使う必要があるのか、ご検討ください。そうしたことが知られないまま、便利そう、といった理由だけで使う人が増えれば、今後もっと多くのトラブルが聞こえてくることになりそうです。ぜひ、よくよくお考えくださいね!

 

 

(トップ画像:Shutterstock/Josep Suria)

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