-ピルだけじゃない―― 一度の装着で5年間、生理を軽くし避妊も高確率の「IUS」とは?-

2019.07.18

「IUS」をご存じですか? 年齢を問わず生理を軽くでき、避妊もでき、子宮の疾患予防も期待できるんです。

 

 

【まとめ】

 

☆IUSは、子宮内に一度装着するだけで5年間、生理を軽くできる避妊器具。黄体ホルモンが徐々に放出される仕組みです。

 

☆安全性が高く、避妊効果も高い。さらに、子宮内膜の組織が異常に増殖する様々な疾患の予防効果もあります。

 

☆どんな人にIUSがオススメ? 取り付けたい場合の流れは? 副作用の心配はないの?疑問に答えます。

 

 

IUSってどんなもの? 避妊できる仕組みとは?

 

 

IUS」、初めて聞く人も多いかもしれません。黄体ホルモンを持続的に放出する小さな器具を子宮内に装着するだけで、避妊や生理の軽減ができるものです。先日はNHK「あさイチ」などでも取り上げられ、話題になっています。(IUSは、Intrauterine Systemの略称)

 

 

器具は大きさ3.2㎝✕3.2cmと小さく、T字型をしていて軟らかい素材で出来ています。

 

 

(Healthtalk.org)

 

婦人科や産婦人科でIUS(医薬品扱いです)を子宮内に取り付けてもらったら、基本的には5年間入れっぱなしにしておくだけでOK。その間、器具からは絶えず黄体ホルモン製剤が徐々に出てくるようになっています。

 

 

(Healthtalk.org)

 

 

黄体ホルモンの働きによって、

 

●子宮内膜が薄くなり、受精卵の着床を妨げる

●子宮頸管粘液の粘性を高めて、精子を子宮に入りにくくする

 

という2方向から、避妊の効果が得られる仕組みです。避妊の確率は非常に高く、IUS装着中の1年間の妊娠確率は0.2%とされています。

 

 

左:通常時、右:IUS装着時

装着によって子宮内膜が厚くなるのを抑えられる

(SlideShare.net)

 

 

もちろん近年ようやく理解が進みつつある低用量ピルも、避妊の効果は非常に高く生理痛や月経前症候群(PMS)の改善にも有効。全身的な効果はメリットでもあるので、PMSの改善など、目的によってはピルの方がお勧めです。婦人科や産婦人科での処置が不要で、体内に装置を入れるわけではないため、手軽に始められます。

 

 

一方、IUSは毎日服用する手間がなく、飲み忘れの心配もありません。もともと体内で作られるホルモンですし、局所的に微量ずつ放出され、影響が拡がりにくいので体への負担は小さくて済みます。1年おきにチェックを受けつつ、5年経ったらすぐに新しい器具と交換すれば、また5年間入れたまま過ごせます。

 

 

生理を軽減して重い生理痛から解放!貧血改善も。どんな人におすすめ?

 

 

IUSにも、避妊以外に様々なメリットや特徴があります。ナビタスクリニックで女性内科を担当する川原麻美医師(産婦人科医、現在は産休中)に話を聞きました。

 

 

●生理の出血量が減少し、生理痛や貧血を緩和できる。

 

IUSは子宮内膜が厚くなるのを抑えるため、生理の際に子宮からはがれ落ちる月経血の量が減ります。研究では、取り付けてから3ヶ月で80%以上減少することが分かっています。

 

その結果、生理痛が軽くなったり、生理による貧血が改善したりする効果も期待できます。

 

生理自体の回数が減ることも多く、約20%の人で生理が来なくなります(妊娠や閉経の可能性はゼロではないので、6週間以上生理が来ない場合や、つわりのような症状が現れた場合は念のため受診を)。入れた際に45歳以上でその後に無月経になった場合は、閉経まで避妊効果があります。

 

 

●子宮筋腫や子宮腺筋症による過多月経や月経困難症を改善。

 

子宮筋腫は、子宮を形作る筋肉組織が異常に増殖する疾患です。筋腫(こぶ)が大きくなって子宮の内部が変形すると、子宮内膜の表面積が大きくなり、結果的に月経時の出血量が増えます(過多月経)。IUSは、子宮内膜が厚くなるのを抑えて経血量を減らす効果から、2014年に過多月経や月経困難症の治療薬としても承認され、保険適応となっています。

 

 

 

 

●全身への副作用が少なく、血栓症リスクが低い。

 

黄体ホルモンが子宮に直接作用し、血液中や隣の臓器に拡がる割合が非常に少ないため、全身的な副作用が少ないのが特徴です。(その代わり、月経前症候群を抑える効果は小さいとされます)

 

避妊や生理の軽減を希望する場合でも、低用量ピルは全身への影響が大きく、エストロゲン(女性ホルモンの一種)が肝臓に影響して血栓症リスクが上がるため、40歳以上で始めることはあまりお勧めされません。一方、IUSなら年齢問わず始められます

 

 

●子宮体がんや内膜の異常増殖の予防効果も。ホルモン補充療法でも。

 

子宮内膜の異常な増殖を抑えるのに、黄体ホルモンは有効です。

 

また、更年期障害はエストロゲンの減少により起きるため、それを補充する治療が行われます。ところがエストロゲンの濃度が高すぎて黄体ホルモン濃度とのバランスが取れなくなると排卵が起こらず、生理が来ないまま子宮内膜が厚くなり続けることがあります(子宮内膜増殖症)。

 

黄体ホルモンの錠剤や、最初から両剤が配合されている薬を使って予防しますが、IUSでも同様の予防効果が得られます。

 

 

●IUSを外すだけで元の状態に戻り、妊娠が可能。

 

妊娠を希望する場合には、医師に相談してIUSを取り出してもらえば、まもなく妊娠が可能になります。

 

 

 

 

以上から、

 

「出産経験があり、これ以上妊娠を希望しない」

「次の出産まで計画的に期間を空けたい」

「長期にわたって避妊したい」

「40歳以上だが、生理を軽くしたい」

 

という女性にはIUSがオススメと言えそうです。

 

 

装着を希望する場合の流れと、知っておきたい注意点・副作用。

 

 

IUSは、婦人科や産婦人科で、医師に子宮内に取り付けてもらう必要があります。まず、電話などでIUSの取り扱いがあるかどうか確認してから受診しましょう。

 

 

受診したら、子宮の位置やサイズ、骨盤内の他の臓器の位置、乳房の検査、腟の内容物の検査などを行います(医師や医療機関によって異なります)。妊娠していたり、その時点あるいは直前まで性感染症にかかっていたりした場合は、IUSは装着できません。

 

 

 

 

装着後、数カ月間は生理とは違う出血が続くことがあります。ただ通常は、時間の経過とともに収まってきます。

 

 

また、一説には装着者の5%で、IUSが自然に脱落してしまうと言われます。特に、腺筋症で子宮が大きかったり、筋腫で子宮内腔が変形していると脱落しやすいとのこと。そうした観点を含めて医師は使えるかどうか診断しますが、体の状況は日々変わってきますので事前に判断しきれないこともあります。

 

 

その他、軽い副作用としては

 

・生理の日数の延長

・生理周期の変化

・卵巣のう胞(一過性)

・IUS除去後の出血

・腹痛

 

などが見られます。

 

 

ごくまれに重い副作用として、骨盤内炎症性疾患、子宮外妊娠、IUSが子宮壁に入ってしまう、卵巣のう胞破裂などがあり得ますが、通常は心配いりません

 

 

取り付け自体は産婦人科を受診していただく必要がありますが、「興味がある」「ちょっと話を聞いてみたい」という方は、ナビタスクリニックの女性内科でもアドバイスできることがあります。是非ご相談ください。

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