子育てと性教育の悩みをすんなり解決できる「イエナプラン教育」とは? ナビタスクリニック新宿の川原医師の著書が話題です。
【まとめ】
☆ナビタスクリニック新宿で診療を行う川原麻美医師の著作『「いや」って言っていいんだよ』が、Amazon・Kindleストア「性教育」部門で第1位を獲得。
☆ オランダの「イエナプラン教育」は、「自分を大切にすること」「相手にいやを伝えること」「相手を尊重すること」を基本とした人間教育の手法。
☆我が子2人の子育てと性教育にイエナプラン教育を採り入れている川原医師。絵本やDVDなどのツール含め、実践的に紹介しています。
Amazon・Kindleストア「性教育」部門で第1位を獲得。――子育てと性教育はつながっている。
ナビタスクリニック新宿で女性内科の診療を行っている産婦人科医、川原麻美医師の著書『「いや」って言っていいんだよ』がKindle版で出版されました。「子育てに性教育を取り入れるためのツールやケーススタディが書いてあり、読んですぐ役に立てられそう」と、反響が広がっています。先日は、Amazon・Kindleストア「性教育」部門で第1位を獲得しました。
同書は、
「性教育」を子育てに取り入れられていますか?
子どもの「いや」を受け止められていますか?
という2つの問いかけから始まっています。
子供を持つ親がしばしば直面するのが、「性教育はいつから始めたらいいか」「どのように伝えたらいいか」という問題。幼稚園や小学校くらいの年齢になった我が子から、「赤ちゃんはどこから生まれるの? どうやって生まれるの?」と、素朴なギモンをぶつけられた、という経験のある方も少なくないでしょう。
親として戸惑ってしまうのは、現在の学校教育における「性教育」はあてにできないと、経験的に分かっているから、ですよね。自分たちの受けてきた性教育が形式的で御座なりであることを、身を持って知った上で親になっているからです。
でも、そうなるとますます困ってしまいます。だったら自分たちが「性教育」をしなければ、と思ったとしても、いざその立場に置かれると、どうしていいか分からない。自分たちが教わってきたことのないものを、急に人には教えられないからです。おそらく学校の先生も同じに違いありません。
これらの性教育の疑問について、具体的に応えてくれるのが同書です。
オランダの「イエナプラン教育」が、なぜ性教育に。日本の性教育と決定的に違うこととは?
前半ではまず、ドイツで考案されオランダで盛んに実践されてきた「イエナプラン教育」が紹介されます。オランダは、子供の幸福度が高い国としても知られます。それはきっと、イエナプラン教育が「人間教育」だから。
同書によればその3つの柱は、「自分を大切にすること」「相手にいやを伝えること」「相手を尊重すること」。
そうして育った子供たちは、自分勝手とは違う、真の自主性を身につけます。子育てが本当に楽になるそうです。そし子供自身、性に関することや性差についても、自然に受け入れられるようになります。
それはそうですよね。性というのは、自分の根源に繋がるテーマであると同時に、自分以外の存在と最も深く関わるテーマでもあります。自分を受け入れ、相手を受け入れ、そこから生命の尊さ、家族とは何かといったことも学んでいくのです。
これに対し、日本の性教育はどうでしょうか? 「性行為」「性交渉」「人工妊娠中絶」を扱った授業が「不適切な内容」として教育委員会の処分を受けてしまう現状。産婦人科医である川原医師が、問題とされた授業の教材を見ても、何らおかしな点はなかったそうです。
性を無理に人間関係や現実の問題と切り離し、極めて機械的に、大人が教えやすい一部分のみ切り取って教えている。その結果が、20代女性では年間4万件の中絶手術、10代女性も毎日40人の中絶手術、さらに性感染症からの不妊症や、妊娠についての知識が不十分なことによる不妊治療の遅れにつながっているのです。
これに対し川原医師は同書で、秋田県や新潟県の性教育改革とその成果を紹介し、「現実に即して性教育を行うことで理解が深まり、結果として人工妊娠中絶数の減少につながる」としています。
また、世界から後れを取っているアフターピル(緊急避妊薬)の市販化やオンライン処方の問題についても解説。現在、策定が進められているオンライン処方の指針についても、「この方針の一番の問題は女性の権利が軽視され、女性が信頼できない存在として議論が進んでいること」と指摘し、具体的に問題点を示しています。
後半では、性教育の実践編。海外の性教育事情、子育てにも取り入れられる海外の絵本、子どもと一緒に読める漫画やDVDも紹介されていますので、今日からでも、イエナプラン教育を少しずつ始めることができます。
日本では避けられがちな「いや」を伝えること。なぜ大事? どう性教育と繋がる?
イエナプランの3本柱のうち、「自分を大切にすること」「相手を尊重すること」の大切さは、日本の教育現場でもよく語られますね。(それがどの程度実践できているかは別ですが)
それに対し、タイトルにもある「相手にいや伝えること」が大事という考え方、気になりませんか? 川原医師は、「特に日本では敬遠されがちな『いや』を伝えること。これを幼い時からできるようになることで、『性教育』もうまく伝えられるようになるのです」としています。
川原医師は、イエナプラン教育を自身の2人の子育てで実践しています。小2の男の子と、年少の女の子。年上とはいえまだ幼いお兄ちゃんが、小さな妹を相手に苦戦しつつも、川原ママの上手な導きで、次第に「いや」を相手に上手に伝えられるようになっていったのだとか。理不尽に我慢させられたり、怒りを爆発させたりせずに、上手に関係を築いています。その様子が活き活きと描かれ、小学2年生とは思えない落ち着いた対応には本当に感心してしまいます。
(写真はイメージです)
「いや」を上手に言えることについて、川原医師は、
「断る側として、断ってもいいんだ、という自分への自信・肯定感・よどころがあって断る ことができ、自分の気持ちを尊重できるようになります」
「断られる側も『いや』と伝えることを身につけられていれば、 断られた時のその捉え方 も違ってきます」
としています。この関係がお互いに成立している2人であれば、それが男女の性に関するシーンだとしても、間違いやトラブルは大きく減るでしょう。望まない性交渉や妊娠など、女性側が一方的に辛い思いを強いられる関係とは無縁です。
「いや」を上手に言うのは、たしかに日本人は上手ではありません。自分が我慢して丸く収めるのが美徳、といった考え方も強いでしょう。だからこそ小さい頃から、「いや」を相手に上手に伝えられるようになることが大事。その後、思春期や大人になってからの人間関係をスムーズに乗り切れるようになるんですね。
「子どもがまさに思春期の方や性教育を家庭でどのように取り入れたらよいか悩んでいる方から、子どもはまだ小さいから性教育はまだ先・・・でもどんなことを準備したらいいのだろうと迷っている方、日本の教育の画一性や多様性のなさに息苦しさを覚えている方、子どもの喧嘩に日々疲れている方、このような方々にぜひ読んでいただきたい内容です」(同書より)
合計67ページとコンパクトでさっと読めるのも嬉しいところ。その中に、大事な要素がギュッとつまっています。子育てと性教育の悩みを同時に解決できる具体例満載の一冊です。
【目次】
はじめに ―「いや」にこめられた思い―
- ストレスのない教育 ―イエナプラン教育との出会い―
- 日本の教育を変えたい! ―インタビュー 川崎知子さん―
第3章 風通しのいい性教育へ
1. 性教育への思い
2. 問題山積みな学校の性教育
3. 性行為・妊娠を教えれば中絶数は減らせる
4. 日本とは対照的なヨーロッパの性教育
5. 産婦人科の現場からここがおかしい性教育
6. 導入編 いつから始める性教育
7. 初級編 絵本の使い方
8. 応用編 「性」の違いを知ろう
9. 最後に ―「いや」の大切さ―
おわりに
川原麻美(かわはら・まみ)
2009年、京都府立医科大学卒業。綾部市立病院、船橋市立医療センター、亀田総合病院産婦人科、亀田IVFクリニック幕張を経て、2019年4月よりナビタスクリニック新宿女性内科で診療開始。(所属学会:日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会)