ここからは、HPVワクチン問題の現状を打破しようと動いてきた堀江貴文氏と久住医師、2人のフリートークをご紹介します
【まとめ】
☆実は利幅が薄く、在庫を多く抱えられないHPVワクチン。だったら、みんなで「予約サイト」を立ち上げる?
☆被害者の人でも、「精神科にかかったら治った」という人も。でも誰も、「ワクチンのせいじゃない」とは言いだせない状況に。
☆定期接種化への道のりは?「知らなかったけれど、政治家は意外と話を聞いてくれるし、割と動いてくれる」と堀江氏。
※前編「HPVワクチン問題、2つのデマに翻弄される接種政策」はこちら。
※後編「アフターピルも性教育も、まずはYouTuberから!」はこちら。
今回は、HPVワクチン問題についての久住医師の解説(前回)を踏まえた、堀江貴文氏と久住英二医師のフリートーク(ナビゲーター:三輪綾子医師)。何が定期接種化を阻んでいるのか、その状況に対して今何をすべきか・・・。行動力ある2人の現実的な戦略談義です!
「だったら、みんなでHPVワクチン予約サイト作りませんか?」
堀江 「HPVワクチン、もっと個人輸入できないんですか? 予防医療推進協会にも、すごく問い合わせが来ますよ。どこで打てるんですか、とか。あと男性も。だから協会で、どこで打てるか、マップを作成したい」
久住 「冷蔵庫の容量の問題ですね。(笑)ただ、ワクチンは全世界的に品薄なんです。輸入原価が上がっています。しかも実は利幅が薄い商売なので、不良在庫を抱えないよう、常に品薄な状態なんです」
堀江 「だったら、みんなで予約サイトを作って、一緒にやりませんか?」
三輪 「一定数集まれば成立しますよね。協会でも一定数希望者がいるんですが、もう少し手を挙げていただければ・・・」
久住 「いいですね。フローを増やせれば回っていくかもしれません。個人輸入ワクチンは、何かあったら補償問題になるので、患者も医師も尻込みしがちなんです。でも、それが流行を繰り返させています。実際、麻疹・風疹は、副作用への誤解が先行して多くの人が打たない選択をした結果、そういう“フリーライダー”が5%以上になって、一気に世界で流行してしまっています。合成の誤謬(個人の判断としては正しくても、それが合成された社会全体では意図しない結果が生じること)ですね。
行動心理学的に、不安や恐怖の方が、客観的な数字よりも人を動かしてしまう。でも、うちのクリニックでも今まで事故は起きていませんし、万が一のアナフィラキシーも対応できる。それは保険診療の範囲内でできますから」
もう「ワクチンのせいじゃない」とは言い出せない“被害者”たち
堀江 「結局やらないといけないのは、定期接種の復活※。それには政治を動かさないといけない。だから僕は最近、すごく政治家に会ってるんです。でも首相に近い人はどっちかというと反ワクチン。『私はインフルエンザワクチンさえ打ったことない』なんて平気で言いますね」
※実際には、HPVワクチンは公費で打てる定期接種ワクチンの1つです。ただ、厚労省が積極勧奨を取り下げて以来、打ち控えが起きており、接種率は1%未満。実質的に定期接種の趣旨が全うされていません。(2019年6月7日追記)
久住 「私も議員にレクに行ってますが、なかなか動かないですね」
堀江 「彼らは何にビビってるんですか?」
久住 「議員もHPVワクチンいいね、という人もいるし、厚労省内もたぶん接種再開で固まっている。でも担当部署の課長さんは2年ごとに交代なので、火中の栗を拾いたくない。厚労省の上より上のレベルから、再開を進めにくい意見も出ているらしく・・・」
堀江 「首相はネガティブなんですか?」
久住 「首相婦人が昔ネガティブでしたよね」
堀江 「僕も実は首相婦人にこないだ会いましたが、夫人は被害者の会の人から、『ワクチンの副作用だと思っていたものが、精神科にかかったら治った。でも、それを被害者の会で言うとめちゃくちゃ攻撃されるらしい』と聞いたらしいですよ」
久住 「私も被害者の会の方と話したり診察させていただいたりしていますが、よくよく掘り起こすと、皆さん、『ワクチンじゃないよね』という話になる。でもみんなが『ワクチンのせいだ』と言ってるから、もう『ワクチンのせいじゃない』とは言いだせない。特に、女子中高生は周りの大人の意見に左右されやすく、思い込みを形成しやすい年頃ですしね』
「分かりやすいボールを投げるしかない」「だから揺さぶる映画を作ろうかと」
久住 「反ワクチンの政治家が耳を傾けたり、動いたりするのも、結局はエビデンス(科学や統計に基づいた根拠)ではなく、『n=1』のナラティブ(患者の物語)ベースなんですよ」
堀江 「そうなんです。だから僕は、『じゃ、こっちもナラティブで行こう。患者を揺さぶろう』という戦略を今、考えてます。映画を作ろうと。まず糖尿病から、その怖さを映画にしようかと。糖尿病は手足の毛細血管がやられても、痛くないので面倒なんですよね。気づいたら手足が腐ってても痛くない」
久住 「糖尿病だと、神経がやられちゃいますからね」
堀江 「そこまで行っちゃう人は、痛くなければ余計に絶対病院行かないじゃないですか。だからホラー映画みたいなのでもつくろうかと。手足ブラブラでも平気、みたいな。炎上しそうだけど」(笑)
久住 「はい。やっぱり伝わりやすいボールを投げるのが大切だと思っています。新聞は高齢者しか読まない、忙しいお母さんは全然読まない。だから、ネットフリックスなんですよね」
堀江 「でも、HPVワクチンは、インフルエンサーもまだ打ってない。ゆうこすさんにも打ってもらってない。ゆうこすさんは、注射で倒れちゃうタイプの人なんですよ。
それに、インフルエンサーも、正面切って『HPVワクチン賛成』なんてやったら、絶対叩かれるんですよ。反対派に。めちゃくちゃ攻撃されますよね。僕はけちらしますけど。久住先生も、ネットの世界ではだいぶ闘ってますよね」
久住 「僕はかなり免疫ついてるんで。(笑) SNSとかって、7人くらいで炎上させられる、って言いますけどね」
堀江 「僕もかなり強力な免疫はついてるんでいいですけど。(笑) インフルエンサーの若い女性には、耐えられないですよね」
実は、「政治家は聞いてくれるし、割と動いてくれる」。
堀江 「なので、僕もこれから政治的に動いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。安倍さんもそろそろ譲るかもしれないので、変わるタイミングで、やめる前に何かやってもらいたいですね」
久住 「すごく社会にとっていいことをされることになると思うんでね」
堀江 「皆さんもそういうコネがあったら、どうぞ。(笑)コネがなくても、自分の選挙区の政治家に行ってみると、話聞いてくれますよ。議員会館にそういう人、おばちゃんたちとか、いっぱいいますよね。アポを取って陳情しに行く、って当たり前なんで、僕たちもやっていいんですよ。やればやるほどいい。数で攻める。これまでITは世界が相手だったので全然やってこなかったんですけど」
久住 「そうなんですね」
堀江 「最近、ロケット関連とHPVワクチン関連で政治家によく会うんですけど、政治家の方々って話をよく聞いてくれるな、って思い始めたんですよね。そして割と動いてくれる。どういうことかと思ったら、これまでも政治に頼らざるを得ない人たちがめちゃくちゃ陳情してて、その人たちの言うことに政治家も偏ってたんだな、と。
あとはクレーマー系ね。聞いたところでは、厚労省の記者クラブって頼めば誰でも会見できるらしいですよね。みんなそれに引きずられている」
久住 「政治家は選挙で落ちるかどうかが一番大事ですからね。選挙の街頭演説の時に、『HPVワクチンどうなってるんだ!』ってヤジ飛ばしてみるとか?」
堀江 「うーん、違う。違いますね。だったら、まずアンケートを取った方がいい。次は衆参同時選挙になる。今、野党が弱いので、その間に選挙をやりたいんですよ、自民党は。7-8月あたりかな。そこで全議員にアンケートをとりましょう。
HPVワクチンの積極勧奨復活※に賛成なのか反対なのか、議員一人ひとりに立場を明確にしてもらう。『有権者に声を掛けます、我々は積極勧奨再開※を支持する議員に票を入れますから』と。これで10万、20万人と集められたら、まあまあな数です。政治家はやっぱりそういうのに弱いでしょうからね」
※2019年6月7日修正
(後編へつづく。話題はアフターピル問題へ・・・)
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
予防医療普及協会理事、SNS media&consulting株式会社ファウンダー。1972年、福岡県生まれ。現在は自身が手掛けるロケットエンジン開発を中心に、スマホアプリ「TERIYAKI」「755」「マンガ新聞」のプロデュースを手掛けるなど幅広い活躍をみせる。 自身のwebメディア ホリエモンドットコム でも予防医療の重要性を呼びかける。
(予防医療普及協会HPより転載)
久住英二(くすみ・えいじ)