消費者のグレープフルーツ離れが進んでいるようです。一因は「薬との飲み合わせが悪い」こと?! とはいえ、健康成分も見逃せません。
【まとめ】
☆グレープフルーツの消費量は10年前の6割減、ピーク時の5分の1まで減少。理由は「食べにくいから」「すっぱくて苦いから」??
☆薬との相性が悪いことも「グレープフルーツ離れ」の一因? 山本佳奈医師が『プレジデントオンライン』でリスクを解説しています。
☆でも、健康効果もちゃんとあります!ビタミンCだけじゃない・・・老化予防にも?!
食卓からグレープフルーツが消えていく?! 理由は味? 手間? それとも・・・?
今日は予報通り、全国的に気温が25℃以上まで上がる夏日となりました。そうなると冷たいフルーツが美味しく感じられますよね。特に甘酸っぱくみずみずしいグレープフルーツは、そのまま食べるのはもちろん、ジュースや、しぼり汁をアルコールで割って飲むのも人気があります。
しかし、意外なことに家庭でのグレープフルーツの消費量は減少傾向。先日も以下のような報道がありました。
総務省の家計調査によると、2018年の1世帯当たりのグレープフルーツへの平均支出額は240円。10年前の08年(694円)から6割以上減少し、支出額が最高だった04年(1175円)と比べると、5分の1程度まで減ったことになる。(日本経済新聞 2019年4月19日)
理由ははっきりとは分かっていません。ただ、ネット上には何通りか、専門家の見解が散見されます。
●酸味が強い、苦みがある
もともと酸味は腐敗のシグナル、苦味や毒などのサインとして、本能的に避けようとする傾向がある。子供の孤食傾向の中で、それらの味覚が開発されないままの人増えている。
●ナイフが必要で食べるのが面倒
カットフルーツが売れる中、食べるのに手間がかかる果物は敬遠されがち。手で向いて食べるミカンさえ面倒と言う人もいる。
●薬との飲み合わせが悪い
高齢者が多く服用している降圧剤や抗狭心症薬、抗コレステロールなど、薬によっては、グレープフルーツによって効き目が強められ、副作用が出やすくなるものがある。
最初の2つは積極的に食べない・食べられない理由とは限りませんが、気になるのは3つめ、薬との関係。先ほどの記事の中でも、以下のような消費者のコメントがありました。
「昔はよく食べたけど、今飲んでいる高血圧の薬との飲み合わせが悪くて食べられない」
飲み合わせが悪い薬はなんと85種類超。重篤な副作用の可能性も・・・
このグレープフルーツと薬の飲み合わせの話、どこかで聞いたことあるでしょうか。年齢が高めで高血圧や心臓の薬を飲んでいる人などは、医師にそう言われているかもしれません。
国立健康・栄養研究所によれば、グレープフルーツに含まれる成分が、①余分な薬を体から排出するための酵素の働きを弱めたり、②必要な薬の吸収を妨げたりする働きを持っているとのこと。
グレープフルーツとの相互作用が知られている薬の代表例として、以下が挙げられています。
これについて、ナビタスクリニックで診療を行う山本佳奈医師も、『PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)』の連載で解説しています。
山本医師は上記の他、一部の抗生物質、真菌薬、抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠薬などにも相互作用が見られるものがあるとしています。さらに花粉症薬・抗アレルギー薬としておなじみの「アレグラ」(一般名:フェキソフェナジン)も、②グレープフルーツで効き目が妨げられてしまうとのこと。
(久光製薬)
現在、85を超える薬がグレープフルーツと相互作用する可能性があるという。また、これらの薬物のうち43種においては、横紋筋融解症、呼吸抑制、消化管出血、腎毒性といった重篤な副作用をもたらし、その数は増加するだろうという。
グレープフルーツと薬の相互作用は、長いものでは3~7日間も持続するという報告もある。相互作用の可能性がある薬を内服している間は、グレープフルーツの摂取は控えた方がいいだろう。
と山本医師はアドバイスしています。
さて、こうした副作用、グレープフルーツのどの成分が原因なのかは、長らく分かっていませんでした。しかし近年、「フラノクマリン類」という種類の物質だと判明。主に小腸など消化管に影響して薬を体内に長時間とどまらせるため、薬の血中濃度が上昇し、副作用が生じやすくなるそうです。
山本医師によれば、
ジュースやジャムなど、加工されたものでも引き起こされることがわかっている。なんと、グレープフルーツ1玉またはグレープフルーツジュース200mLで、全身の薬物濃度の上昇やそれによる悪影響を引き起こすのに十分なのだという。
とのこと。また、原因となるフラノクマリン類を含む柑橘類として、
マーマレードでおなじみのセビリアオレンジやハッサクがある。他には、スウィーティー、夏ミカンやライム、東南アジアのマレー半島が原産のポメロ、ミカンとグレープフルーツが交差されたタンジェロスなどが挙げられる。
としています。なお、国立健康・栄養研究所によると、かんきつ類の中でも、オレンジやタンジェリンからは、フラノクマリン類は検出されていないそうです。
実はアンチエイジングに嬉しい成分も! 薬の心配がなければ、上手に食事に採り入れて。
一方、グレープフルーツは重要なビタミンC源であることも、よく知られていますよね。
ビタミンCは、体内で合成することができず、野菜や果物など食品から摂取しなくてはなりません 。ビタミンCは、体内でコラーゲンの生成に関わり、重要な抗酸化物質としても働いています。また、ほうれん草など野菜に含まれる鉄分(非ヘム鉄)の吸収をアップさせる物質でもあります。
不足するとコラーゲンの構造が弱くなるため、皮膚・粘膜の老化や不調、肌荒れにつながります。もっとひどいと毛細血管から出血し、歯肉炎や貧血、全身倦怠感、脱力、食欲不振の症状が出てきます。
特に喫煙者の人はビタミンCを多く消費してしまうことが分かっていますから、禁煙できない方は、努めて多く摂らねばなりませんね。
しかも、グレープフルーツに含まれるのは、ビタミンCだけではありません。独特の苦味成分でもある「ナリンギン」には、血中脂肪減少と強い抗酸化作用があると、動物実験で報告されています。血管の老化(動脈硬化)を食い止めたり、ビタミンCの吸収を助けたりする作用がありそうだ、ということです。
実際、ナリンギンのサプリメントなども販売されています。ただし同論文では、ナリンギンだけをサプリで摂るよりも、レッドグレープフルーツ果汁の方がより効果があったとしています。
なお、山本医師はグレープフルーツを含むフルーツの週3回摂取は、Ⅱ型糖尿病のリスク低下と関連する、という論文を紹介しています。ただし、果物ジュースではリスク上昇と関連しており、ジュースでは食物繊維が同時に摂れないことを指摘しています。
消費量が減っているとはいえ、スーパーマーケットで1年中、必ず売られているグレープフルーツ。薬との相性の心配がない人は、ぜひ健康のために、新鮮な果肉を食事に採り入れたいですね!
山本佳奈医師