-薬による治療は大きく3種類――ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬、向精神薬-

2019.04.03

4月からナビタスクリニック新宿で女性内科を担当する産婦人科医、川原麻美医師に更年期障害の治療について聞きました。(インタビュー中編)

 

 

【まとめ】

 

☆ホットフラッシュ・発汗やのぼせ、ほてり、など自律神経の不調には、ホルモン補充療法(HRT)が効果的です。

 

☆欧米での普及率は30~50%にも。副作用は月経前に似ている?!多くは軽く、薬の調整で改善できます。

 

☆それ以外の、肩こりや頭痛には漢方薬、情緒不安定には向精神薬も使います。治療は一人ひとりにあわせたオーダーメイド。

 

※前編「もしかして更年期障害?――症状は人それぞれ。心と体の変化に焦らず向き合って。」はこちら

※後編「我慢するよりラクに乗り切ろう。ホルモン補充療法はキレイと健康の味方です!」はこちら

 

 

ホットフラッシュやほてり、のぼせ、発汗には、「ホルモン補充療法」。

 

 

――ここまで、更年期障害の様々な症状を教えていただきました(前回参照)。ここからは、薬による治療について教えてください。

 

 

川原 更年期障害の主な原因が、女性ホルモンのエストロゲンが不安定に減少していくことに注目し、少量のエストロゲンを補うのが「ホルモン補充療法」(HRT)です。

 

HRTは、ほてりやのぼせ、ホットフラッシュ、発汗などの症状、つまり、血管拡張や熱の発散をつかさどる自律神経の不調に特に有効です。

 

 

 

 

――ホルモン補充というと、自然な体の変化に逆らうようで抵抗がある、がんになりやすいというウワサもあって不安、という人もいるようですが。

 

 

川原 本当は全然そんなに身構えるようなお薬ではないんですけどね。スタッフの間では、割と気軽に「仕事に支障が出るし、HRT始めようかな」なんて話題になったりします。

 

むしろ、放っておいて女性ホルモンの値が乱高下したり、急降下したりするほうが、体への負担は大きいです。

 

それよりも、適量の女性ホルモンを足してあげることで、クッションを敷いてあげて、だんだんと着地させるようなイメージでいていただくといいですね。

 

がんについては誤解が広まってしまったのですが、心配する必要はないことが明らかになってきました(詳しくは後編参照)。

 

 

――海外では日本より普及しているのでしょうか?

 

 

川原 欧米では30~40%の普及率と言われています。もっとも普及している国の一つ、オーストラリアでは、閉経後の女性の過半数がHRTを行っています。

 

 

久光製薬) 

 

 

――日本はかなり普及が遅れている印象ですね。

 

 

川原 そうなんです。欧米はピルも普及していることもあって、元々ホルモン療法への抵抗が少ないのかもしれませんね。

 

 

副作用が心配? 多くは薬の調節で対応でき、体が慣れてくれば治まります。

 

 

――ただ、気になるのは、HRTの副作用です。やはりないわけではないですよね?

 

 

川原 使う薬剤によって異なりますが、ないわけではありません。それでも、多くはとても軽いものです。

 

よく聞かれるのは、不正出血、乳房のハリや痛み、おりもの、下腹部のハリ、吐き気などです。ただ、薬の量などを調節して改善できますし、体が治療に慣れてくる1~2ヶ月後までに治まるものがほとんどです。不安などは医師に相談してください。

 

 

 

 

――生理前や生理痛と同じような感じですか?

 

 

川原 確かに、例えば月経前に胸のハリや痛みを感じる人は多くて、それと同じようになる人もいます。乳房にもエストロゲンを受け止める受容体が集まっているためです。HRTによって、不足していた女性ホルモンに刺激され、若さを取り戻したと思っていただければ。(笑)

 

もちろん、とても辛いのであれば、医師に相談して、薬を変えたり量を減らしたり、工夫してもらえばよいと思います。

 

 

――そう聞くと安心ですし、やってみたいな、という気になりますね。

 

 

川原  更年期の期間には個人差がありますが、やはり閉経前後で合計10年ほど続く人も多いです。そのうちホットフラッシュや発汗などの症状が著しいのは数年間。ただ、その数年が、子育て、介護、仕事などが大変な時期と重なる人は多くて、どれも簡単に休めないから悩むんですよね。

 

そんな時期だからこそ、上手にHRTを取り入れて乗り切れたらいいですね。

 

 

漢方や向精神薬も適度に組み合わせ、まさにオーダーメイド治療。

 

 

――では、その他の症状、例えば肩こりや頭痛、あるいは気分の落ち込みやイライラについてはどうでしょうか?

 

 

川原 そうした症状にはHRTだけでは効果が乏しいので、漢方や向精神薬を使います。特に、ほてりなどの症状が軽く、いきなりHRTには抵抗感もある、という方には、まずは漢方にしてみましょう、ということも多いですね。

 

 

 

 

――漢方薬だと、例えばどんなものがよく使われるのでしょうか?

 

 

川原 一般的なのが、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、加味逍遥散(カミショウヨウサン)、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)といったところです。

 

 

●当帰芍薬散:比較的体力が低下していて、冷え症で貧血傾向がある方

●加味逍遥散:比較的体質虚弱で疲労しやすく、不安・不眠などの精神症状がある方

●桂枝茯苓丸:体力中等度以上でのぼせ傾向、下腹部にこわばりや、押して痛みのある方

 

 

――各種症状の緩和に、普通の鎮痛剤や血行促進薬などでなく、漢方を使われるのはなぜですか?

 

 

川原 漢方は、多彩な症状の緩和が期待できるためです。西洋医学の薬だと一対一対応が多いので。ですから閉経後の場合などは、HRTをベースにして漢方も追加すると良いかもしれませんね。

 

ただ、漢方は、症状だけでなく、その方の体質とお薬がマッチしないといけませんので、自己判断で市販薬を使われる前に医師にご相談することをお勧めします。

 

 

――情緒不安定が著しい、といった場合には、向精神薬も使われるとのことですね。

 

 

 

 

原 不眠がとにかく強い、気分の落ち込みが辛い、涙が出てくる……といった症状を訴えられる場合でしたら、まず向精神薬使ってみましょう、となりますね。

 

最近の「新規抗うつ薬」と呼ばれる薬は、副作用も少なく、またほてりや発汗など自律神経系の症状にも有効なことが分かっています。

 

 

――なるほど、HRT、漢方薬、向精神薬を、その人その人の症状に合わせて組み合わせていく。更年期障害の治療は、まさに「オーダーメイド」なんですね。

 

後編に続く】

 

 

川原麻美(かわはら・まみ)

2009年、京都府立医科大学卒業。綾部市立病院、船橋市立医療センターを経て2014年、亀田総合病院産婦人科。2016年より同院不妊生殖科医員。2019年4月よりナビタスクリニック新宿女性内科でも診療開始。(所属学会:日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会)

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