昨年の全患者数を既に超えたはしか(麻疹)、非常に強力な感染力で、就学・就職の移動シーズンを直撃しています!
【まとめ】
☆この3カ月の麻疹患者の増加スピードは、2014年の大流行時を上回っています。20~30代中心に、関西から関東へ拡大中!
☆脅威の感染力!飛沫や接触だけでなく、空気感染します。患者と同じ部屋に20分いるだけでうつってしまいます。
☆世界各地で流行中。日本も持ち込まれるリスクにさらされています。ワクチン2回接種が、自分だけでなく大切な人たちを守ります。
大流行年を上回るスピードで、関西から首都圏へ、20~30代を中心に拡大中。
麻疹患者が今年1月から急増しています。今年に入って3月20日までに300人以上の患者が出ています(国立感染症研究所)。3か月間で既に昨年1年間の患者数を超えました。1週間に新たに40~50人超が麻疹と診断された週も、複数回。大流行した2014年を上回る勢いです。
(国立感染症研究所)
これまでは特に大阪や三重を中心とした関西・東海地方で流行していました。それがさらに東京でも患者が増え、関東近県でも患者が増えてきています。
患者は20代、次いで30代に多く、風疹と違って男女差はありません。
空気感染する“脅威”の感染力。うつれば90%以上の人が発症します。
「患者300人? 風疹の1000人と比べたらまだ3分の1以下でしょ」と思われたかもしれません。麻疹の恐ろしいのは、非常に強力なその感染力。患者数の合計こそ風疹には及ばないものの、感染力では麻疹の方がずっと上です。
飛沫や接触による感染はもちろん、空気感染もします。そのため免疫のない人が患者と同じ部屋に20分いればうつると言われます。
潜伏期間は10〜12日(最大21日)。ただ、症状が出現する1日前から人にはうつります。具体的には、発疹出現の3~5日前から発疹出現後4~5日程度とされています。
しかも、感染しても症状の出ない不顕性感染はごくごくわずかで、90%以上の人が発症します。
麻疹は当初、38℃程度の発熱と、咳、鼻水、結膜炎といった風邪のような症状が約2~4日続きます。その後、口の中に、麻疹に特徴的な白い斑点(コプリック斑)が現れ、いったん体温はやや下がります。口の中の斑点も消え、風邪が治ってきたかな、と思っていると、その後半日くらいのうちに、再び高熱(多くは39℃以上)が出て、体に発疹が出現します
麻疹の皮膚症状(Shutterstock)
コプリック斑(国立感染症研究所)
また、合併症の肺炎と脳炎は、麻疹による急性死亡の二大原因となっています。赤ちゃんの時に麻疹にかかると、平均7年後に重い脳炎を発症することもあります。
2回接種でもうつる?!それでも最善かつ唯一の予防法は、2回接種。今こそアクションを!
これまでにも書いているように、日本は2015年3月に麻疹「排除国」認定を受けています。
しかし海外では、フィリピンはじめ各地で大流行中。WHOも昨年11月、「ワクチン接種状況の違いから世界的に流行している」と、注意を促しました。海外からいつ入って来てもおかしくなく、実際そうして入ってきた麻疹が国内で拡大しています。
2107年の麻疹発生状況。東南アジア、中央アジア、アフリカ、ヨーロッパで特に多発。(WHO)
集団免疫(多くの人が免疫を獲得することで、感染症の流行を防止できる効果)を維持するには、抗体保有率90~95%が必要ですが、実はかなりの世代で90%を下回っているのが現状。危険な状態です。
日本はちょうど今、就学・就職の時期。全国的に人の移動が活発になるため、いっそう感染が拡がりやすい状況でもあります。もっと言えば、厚労省が風疹含有ワクチンの無償化を決定した影響で、成人男性のMR(麻疹・風疹の二種混合)ワクチンの接種控えが起きていないか、ということも心配されます。
国立感染症研究所によれば、この3カ月で報告されている麻疹患者のうち、ワクチン接種歴なしと接種歴不明が7割(ほぼ半々)を占めていました。2割が1回接種です。
そして実は、残る1割が2回接種しても感染したという人でした。ちょっとショッキング、そして改めて驚きの感染力ですね。ただしその半数以上が「修飾麻疹」と呼ばれる軽い風邪程度の症状で済んでいます。(それでも他人への感染力はありますが・・・)
それでもなお、現状で最も有効な予防法が、ワクチン2回接種であることに間違いありません。米国のCDC(疾患予防管理センター)も、米国で標準使用されているMMR(麻疹・風疹・おたふく風邪の三種混合)ワクチンについて、「非常に安全で非常に効果的。1回接種では93%、2回接種では97%の麻疹予防効果がある」としています。
ナビタスクリニックでも、MRワクチンに加えてMMRワクチンを取り扱っています。
(Shutterstock)
MMRワクチンは、国内未承認とはいえ、北米のほか、南米、ヨーロッパ、オーストラリア、台湾、香港、韓国、シンガポールでも乳幼児に定期接種として普通に使用されているワクチン。効果と安全性のデータも豊富です。MMRワクチンで予防できるおたふく風邪(流行性耳下腺炎)は、症状は比較的軽いものの、男性の生殖機能障害つまり男性不妊を引き起こすリスクもあります。
予防接種は自分を守るだけではありません。見知らぬ誰かのためだけでもなく(もちろんそのために動けることは崇高です)、自分の大切な人たちを守ることにつながります。今、アクションを起こしましょう!