-はしか流行、過去10年で最悪!「排除国」の日本で何が?-

2019.03.02

今年に入り、2014年の大流行を上回る勢いで麻疹患者が増えています。WHOの「排除国」に認定されたはずなのに、どうしてでしょうか?

 

 

【まとめ】

 

☆2015年に麻疹「排除国」に認定された日本。しかし、今年の患者数はすでに220人超と、昨年の合計数に届きそうな勢いです。

 

☆背景に、予防接種政策の遅れが指摘されています。ワクチンの副反応訴訟が相次いだ1990年代以来、国は逃げ腰のまま・・・。

 

☆一度かかったり2回予防接種を受けていても、風邪程度の軽い麻疹にかかることも。集団免疫に必要な抗体保有率90~95%を割り込んでいる世代も。

 

 

 

国内感染者が急増、すでに昨年合計に迫る勢い。

 

 

一昨日の【Dr.久住が斬る!】でも取り上げた麻疹(はしか)の全国的な流行拡大。以下、改めて国立感染症研究所が発表している麻疹の累積患者数の推移です。

 

 

国立感染症研究所

 

 

2014年の大流行には国内の感染者数が年間462人にまで達したものの、その直後は激減。2015年には世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局により、日本は麻疹の「排除国」に認定。患者は毎年ゼロではありませんが、海外からの輸入例と、そこからの感染事例のみになっていることが認められたものです。

 

 

ところが今年は、すでに220人超。春に急増した昨年の合計282人に届こうかというところまで来ています。まず大阪を中心に関西で流行が拡がり、関東など国内各地で患者が報告されています。

 

 

排除国のはずの日本で、一体なぜ? 何が起きているのでしょうか?

 

 

25年以上、大きく後退したままの国の予防接種政策

 

 

ナビタスクリニックが、麻疹の感染拡大と予防接種について日本経済新聞の取材を受けたのは昨年6月のこと(くわしくはこちら)。

 

 

ブログでも、

 

 

1977年4月2日~1990年4月1日生まれ(来年度に30~42歳)の人たちは感染リスクが高い

 

●この年代は、ワクチンは1回接種、2008年のキャッチアップ接種も対象外だったため、免疫が十分でない可能性がある

 

●予防接種がなかったそれ以前の世代は、幼少期に自然に麻疹にかかり、予防接種よりも強い免疫を獲得していると考えられる

 

●1990年4月2日生まれ以降の人たちは、2回接種のチャンスがあった(キャッチアップ接種含む)

 

 

といったことをお伝えしました。

 

 

(Shutterstock)

 

 

欧米では1980年代から2回接種が導入されていた麻疹含有ワクチン。一方、日本で2回接種が導入されたのは、ようやく2006年です。予防接種政策の遅れの背景には、1990年代に相次いだ予防接種の副反応訴訟があると見られます。

 

 

実際、この時期に麻疹含有ワクチンの接種率は低下しました。ワクチン対策の強化にすっかり逃げ腰になってしまった厚労省も、1994年に予防接種法を改正。麻疹ワクチンなどの定期接種が、国民にとって「義務」ではなく「努力義務」=受けるよう努めなければならないものとなり、自治体にとっても接種をさせる「義務」でなく、接種を勧めるという意味の「勧奨接種」となりました。

 

 

麻疹についてはその後、接種率の低かった世代に対してキャッチアップ接種の措置が2回取られましたが、1回接種世代は何らフォローもないまま放置されているのが現状です。

 

 

かかった人も、2回接種の人も、免疫が弱まっているかも。

 

 

さて、実は、過去に麻疹にかかった、あるは2回接種した、という人も、安心はできません。それでもごく軽い麻疹にかかることがあります。「修飾麻疹」と言います。

 

 

「修飾麻疹」は典型的症状が見られず、風邪と勘違いされがち。それでも周囲の人への感染源にはなり得るので、自覚なくウイルスを拡散させてしまいます。

 

 

修飾麻疹は、いったん免疫を獲得しても、その後ウイルスとの接触が全くないと免疫が弱まってしまうために起こります。排除に成功し、国内由来の自然な流行の起きない我が国では、人々の麻疹への免疫は弱くなる一方。

 

 

グラフは、どれくらいの割合の人がどの程度の強さの免疫を持っているか、年代ごとに表したものです。注目すべきは、緑色の折れ線

国立感染症研究所

 

 

麻疹あるいは修飾麻疹の発症予防の目安とされるのが、この緑色の折れ線で示される「PA抗体価128倍以上」という免疫の強さで、できればもっと強力な「256倍」以上が望ましいとされます(医療従事者は「256倍」が求められます)。

 

 

問題は、麻疹の集団免疫(多くの人が免疫を獲得することで、感染症の流行を防止できる効果)を維持するには、抗体保有率90~95%が必要とされていること。

 

 

ところが、この緑色のラインを追っていくと、かなりの世代で90%を下回っているのが分かります。明らかに赤信号。自然に麻疹ウイルスに接触する機会のない環境の中で、それぞれ

 

①6歳頃から10代:就学前の2期目の接種を逃した

②20代:キャッチアップ接種を逃した

②30代:そもそも1回接種

③60代以上:高齢により麻疹免疫が低下

 

と説明できそうです。

 

 

実際、ここ最近国内での感染者数が増えているのは、すべて海外から持ち込まれ、多くは知らないうちに広まったもの。日本は「排除国」とはされていても、決して油断できる状況にはないのです。

 

 

身近に今流行していないからと、お子さんのワクチン接種を忘れてしまったり拒否したりするようなことは、絶対にNG、ということですね!

 

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