-骨髄バンク問い合わせ急増――骨髄提供のハードルを下げる社会的な仕組みを!【ナビタス医師陣・解説まとめ・骨髄移植編】-

2019.02.22

競泳・池江璃花子選手の白血病公表で、改めて注目された骨髄バンク。課題は、ドナーが骨髄提供しやすい環境の整備です。

 

 

【まとめ】

 

☆白血病細胞は、骨髄で未熟な血液細胞ががん化したもの。そこで骨髄の「造血幹細胞」を、ドナーのものと入れ替えるのが「骨髄移植」。

 

☆池江選手の白血病公表で、骨髄バンクへの相談が急増。ドナー登録は50万人いても、白血病の型が合う確率は1%未満、より多くの登録者が必要。

 

☆型が適合しても、実際に骨髄提供に至る数はさらに少なく。体調、家族の反対、仕事などスケジュール的な負担が大きい現状。社会として取り組みを!

 

 

※前編「競泳・池江選手は急性白血病? “早期発見”ではない?【基本編】」はこちら

 

※中編「抗がん剤がよく効く白血病。私たちにできる一番身近な応援って?【薬物治療編】」はこちら

 

 

 

 

競泳・池江璃花子選手の白血病公表で改めて関心が高まったのが、骨髄移植と、それを支える骨髄バンクです。ナビタスクリニックの血液内科医陣がメディア出演し、解説と共に課題と提案を示しました。

 

 

骨髄移植ってどんなもの? 目的は2つあります。

 

 

骨髄は、赤血球や白血球といった血液細胞が作られる場所です。その骨髄で、未熟な血液細胞に何らかの遺伝子異常が起こってがん化し、無限に増えてしまうのが白血病。

 

 

(日本テレビ「スッキリ」2019.2.14)

 

 

そこで骨髄を満たす骨髄液に含まれる「造血幹細胞」※を、他の提供者(ドナー)の正常なものと入れ替えるのが「骨髄移植」です。

※血液細胞を生み出す元になる細胞。増殖能力が高く、様々な血液細胞へと分化していく。

 

 

国立がん研究センター がん情報サービス

 

 

骨髄移植は、抗がん剤治療(寛解導入療法、中編をご参照ください)によっても予後があまりよくない、つまり再発する可能性が高いタイプの白血病の場合に、検討されることがあります。

 

 

(日本テレビ「スッキリ」2019.2.14)

 

 

久住医師は、骨髄移植(造血幹細胞移植)の目的について、

 

 

「2つあります。まず、骨髄移植を前提としているので、事前に強い薬を使って白血病細胞を徹底的にやっつけることができます。もう一つの目的は、ドナーの方から提供された骨髄に含まれる免疫細胞によって、白血病細胞をやっつけてもらうことです」

 

 

と説明します。

 

 

骨髄バンクへの問い合わせやドナー登録が急増!  

 

 

国内では(公財)日本骨髄バンクが、ドナーと患者さんの情報を蓄積し、マッチングを行っています。

 

 

(テレビ朝日「あさチャン」2019.2.14)

 

 

今回、日本骨髄バンクは公式ツイッターで、「競泳の池江選手に関しての報道があり、たくさんのお問い合わせをいただいています。まだまだドナーは足りていません。皆様のお力添えをお待ちしております」とツイート。相談件数も、以前は1日に5~6件だったのが、日々数百件に急増したといいます。

 

 

骨髄移植のためには、白血球の「型」が患者とドナーで一致している必要があります。合わないと、白血球同士がケンカをしてしまうためです。

 

 

ドナーとして、白血球の型が最も一致する可能性が高いのが、兄弟姉妹。両親それぞれ2本の染色体から1本ずつもらっているので、組み合わせを考えると4分の1の確率になります。逆に親は、半分は違う染色体なので、患者さんと適合することはほとんどありません。

 

 

「親兄弟、親戚で駄目だった場合は、骨髄バンクに依頼して、型の適合するドナーの方を見つけてもらうことになります。一般の適合率は1%未満なので、多くの登録者が必要になります」(久住医師)

 

 

一般に、血縁のない人同士の白血球の型が合う確率は、わずか数百~数万分の1と言われます。分母が大きくなるほど、適合する相手も見つかりやすくなる、というわけです。

 

 

(日本テレビ「スッキリ」2019.2.14)

 

 

なお、骨髄バンクでドナーが見つからない場合や、事態が切迫していて間に合わない場合、臍帯血(さいたいけつ)※移植も検討されます。

 

※臍帯は、いわゆる「へその緒」、母体から胎児へ栄養や酸素を供給するパイプです。分娩後の臍帯と胎盤に残った血液(臍帯血、臍帯血バンクが冷凍保存)には造血幹細胞も含まれ、少数でも骨髄の機能を回復させる能力を持ちます。

 

 

ドナー登録ってどうやるの? 骨髄提供までの流れは?

 

 

ドナー登録できるのは、18~54歳の健康な男女で、男性は体重45㎏以上、女性は体重40㎏以上、そしてBMI(体重指数)が30未満過去に輸血を受けたことがない、という条件を満たす必要があります。

 

 

(TBS「ビビット」2019.2.14)

 

 

登録希望者は、献血ルームなどで説明を受け、申込書に記入後、採血(2ml)し、型や感染の有無などを調べます所要時間はおよそ15~20分程度。後日、登録完了のお知らせが来ます。その後はお呼びがかかるまで出番はありません。

 

 

(TBS「ビビット」2019.2.14)

 

 

さて、運良くドナーと患者の型が適合した場合、骨髄提供はどのように行われるのでしょうか。

 

 

「通常、提供の際には入院していただき、全身麻酔をかけてから、骨盤の所に鉛筆の太さくらいの針を刺して骨髄液を抜き採ります。患者さんの体重に合わせて800cc程度必要なこともよくあります(通常400~1200cc)。ドナーさんが貧血にならないよう、事前にドナーさん自身の血液を少しずつ採取して貯蔵しておき、骨髄液採取の後に体内に戻します」(久住医師)

 

 

そのため3、4日~1週間程度の入院が必要になるとのこと。採取後の患部の痛みについては人それぞれですが、ほとんど問題なく過ごせたという人も多いようです。

 

 

(TBS「ビビット」2019.2.14)

 

 

「なお、最近では、全身麻酔が必要でない採取方法もあります」と濱木医師。「白血球を増やす薬を4~5日間注射して、『末梢血肝細胞』と呼ばれる造血細胞を血中に増やします。それを太い血管から採取する、というものです」

 

 

ドナーへの通知から採取までは、全部で約150日。採取の時期はできるだけドナーの都合にも合わせて調整されます。その間、患者も抗がん剤治療を行って準備しています。

 

 

ドナー登録50万人でも足りない・・・社会的な体制整備を!

 

 

現在、すでに50万件近いドナー登録があるとのこと。それでもまだ10~30代の登録者が少なく、登録者を募っているそうです。

 

 

(フジテレビ「グッディ!」2019.2.13)

 

 

理由は2つ。先の通り、血縁のない人同士で白血病の型が適合する確率が、非常に低いこと。そして、もう一つは、いざドナーとしてお声がかかっても、提供にまで至る例が少ない現実があります。

 

 

病気や妊娠といった体のコンディションだけでなく、「家族の壁もあります」と濱木医師。「未婚の時に登録して、結婚してから配偶者に反対されたり、親や子供に反対されたり、またタイミングとして子育て、親の介護と重なってしまって、今は難しい、という方はいらっしゃいます」

 

 

(テレビ朝日「あさチャン」2019.2.14)

 

 

さらに、スケジュール的な問題が大きいようです。久住医師は、

 

 

「平日に8回ほど医療機関に足を運ぶ必要があり、仕事の都合で協力できない方も少なくありません。現在は個人の善意と頑張りに頼っている状態です。それには限界があります。企業による『ドナー休暇制度』や、自治体による『ドナー助成制度』といった仕組みを、社会として整備・拡充していく必要があります」

 

 

と提案します。

 

 

(TBS「ビビット」2019.2.14)

 

 

「企業も平日に集団でドナー登録の機会を設けたり、医療機関も休日に対応してもよいはずです。日本人は、みんなが足を踏み出したら最後に自分も、という国民性ですが、そうではなくて、それぞれが自ら率先して一歩踏み出していただきたいですね」

 

(TBS「ビビット」2019.2.14)

 

 

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