-【Dr.久住が斬る!】風疹予防接種の無償化、国が予防に本気でないことは自明です。(後編)-

2019.02.04

成人男性への風疹抗体検査・定期予防接種は、早くても夏以降。明らかなワクチン不足なのに、急輸入は検討すらされていません。なぜなのでしょうか?

 

【まとめ】

 

☆国が見ているのは、国民よりも、国内ワクチンメーカー?「自国は自分たちで守る」という大義名分を傘に、“身内”を擁護している?

 

☆対象の成人男性にまず課される抗体検査は、陽性でも2度足になり、働き盛りの男性にとって大きなネック。供給不足の時間稼ぎか。

 

☆そもそも、「同世代の抗体陽性率80%⇒85%に引き上げれば集団免疫を獲得できる」という国の理屈がインチキという話も!

 

 

※前編はこちら

 

 

厚労省が見ているのは国民ではなく、国内ワクチンメーカー?!

 

 

成人男性への予防接種無償化を決めたものの、国産の風疹含有ワクチンの増産には1年以上かかります。必要量300万本として、現状では100万本以下しか確保できないことは、前回書きました。

 

 

海外のワクチンは国内製品とは違う製造基準・品質基準で作られています。国内製品と同じ試験でも違う結果が出たり、成分が少し違っていたり、国内では使用できない成分が含まれることもあります。となると、安全性を確認したり、副作用救済費用を考えたりするのも、容易ではない、と国は説明するかもしれません。

 

 

(なお、個人輸入では、薬代に加え、輸送費や副作用に備えた保険料もかかります。ナビタスクリニックは非常に良心的、利益はほとんどないでしょうと、ワクチン供給側関係者の方に言っていただきました)

 

 

だったらいっそ、日本の基準を世界標準に合わせてしまえばいいのに、と思われるでしょうか。確かにそうなのです。ところが、そうした動きは鈍く、ほとんど感じられません。

 

 

国内のワクチンメーカー大手3社(化血研、阪大、北里)は、すべて大学から始まった研究機関でもあります。私には、「自国は自分たちで守る」という大義名分を傘に、身内を擁護し、彼らの既得権益を守ってやっているようにしか見えないのです。

 

(阪大微生物病研究会)

 

 

予防接種部会など厚労省の検討会でも、輸入を提案する人はありません。国の検討会には、そうした面倒な意見を出さない専門家(現場から離れて久しい偉い先生たち)を選んで呼んでいるのでは、と思うくらいです。たとえ意見が出ても、厚労省側からは「検討します」「宿題にします」という常套句しか出てこないでしょう。

 

 

それでも形としては、検討会で専門家に諮った、というアリバイが作れます。

 

 

「抗体検査」を求めるのは、ワクチン不足の時間稼ぎ?

 

 

ワクチンを定期接種化するということは、自治体の業務になるということです。責任が国から自治体に移る、ということです。つまり、その地域の対象者に対し接種を推し進めていかなければならず、その方法は自治体の裁量でありタスクとなります。

 

 

話を聞いたワクチン供給側の関係者によると、予防接種の定期化は、風疹が流行し始めた昨年夏ごろには厚労省の予防接種部会で議題に上がっていたそうです。そして年末に滑り込みで2018年度の補正予算に組み込まれました。今年度の事業として予算がついているわけですから、今年度中に着手しなければなりません。

 

(イメージ画像)

 

 

今回出された厚労省の追加方針は、2月上旬の政令省令改正によって実効性を持ちます。4月から(報道では夏から)の受診券配布に向け、各自治体は大慌てで準備を開始することでしょう。

 

 

 

対象者のリストアップと印刷、発送といった作業と同時に、委託医療機関の選択や連携、そして分配された予算をもとに、抗体検査費用やワクチン接種料金をいくらに設定するのか……自治体としては、決めねばならないこと、やらねばならないことが一気に降ってきた状況です。段取りをつけた上で、GOサインを待とうという自治体もあるでしょう。

 

 

ただ、ここで改めて気になるのが、抗体検査の実施です。今回の追加の方針でも、対象となる世代にまず抗体検査を課す点に変更はありませんでした。

 

 

抗体検査を実施すれば、たしかにワクチンのムダは生じません。しかし、抗体検査を受けて陰性と診断され、それから接種の運びとなるのでは、多忙な働き盛りの男性にとって負担が大きすぎます。陽性の人(接種不要の人)であっても、検査とその結果を聞きに行くのとで、2回は医療機関に足を運ばねばなりません。

 

 

そもそも2割しか陰性と判断されないのに、2回も受診しなければならない。インフルエンザのようにそこら中に患者がいて感染リスクが高いわけでもない。これでは重い腰が上がりません。

 

 

厚労省はその点を織り込み済みで、供給不足の混乱を免れるために、あえて抗体検査を必須としているのではないか、そう疑いたくもなります。しかも、定期接種化すれば責任は自治体に移ります。形の上では、国はやるべきことをやったと言える、というわけです。

 

 

厚労省は対策が不十分だと知っている!

 

 

さらにひどい話を耳にしました。

 

 

『医療経済』2019年1月1日号に掲載された、ロハス・メディカル編集発行人の川口恭氏の論説「風疹緊急対策のインチキ」によれば、厚労省は、「もし2020年7月までに500万人程度が抗体検査を受ければ、おそらく100万人程度が陰性となってワクチンを接種することになる。そうなれば対象世代の抗体陽性率80%に5%程度上乗せして85%と集団免疫を獲得できる」という考えのようです。

 

 

要するに、本来は接種を受けるべき300万人分が揃わなくても、2020年7月までに100万本確保できれば、なんとか集団免疫は維持できる、というのです。

 

 

ところが川口氏によれば、上記の80%や85%という数字の出し方に、インチキがあります。専門的な話になりますが、ざっくり言えば、「陽性」と判断する基準が甘いのです。この80%は、感染拡大を防ぐには不十分な免疫の付き方の人(かかってしまうが重症化しないい人)も含んでの数字。もし「陽性」の基準を厳しくすれば、今回抗体検査と予防接種が無償化される世代の成人男性では、陽性率は70%台になると見られます。同時に、現在の基準のまま85%を達成しても意味はありません

 

 

 

また、そもそも抗体陽性率の計算のもとになったサンプルの集め方にも、偏りがあるようです。健康意識の高い人たちの集団であれば、抗体陽性率は実社会より高く算出されます。

 

 

何より、厚労省はこれらのことを認識しているのです。先に、免疫の付き方が不十分な人が多いことを踏まえて、予防接種を推奨する通知を出しているといいます。つまり抗体陽性率80%という数字を当てにすべきでないことを知っているのです。

 

 

以上を踏まえると、厚労省が見ているのは、国民ではなくワクチンメーカーだと思わざるを得ません。のらりくらりろお茶を濁しているうちに、ワクチンを求める動きは後退し、国産ワクチンの製造が追いつくと考えているのではないか。

 

 

しかし、風疹の流行が長引くほど、悲しい思いをするご家族も増えてしまうでしょう。一番の懸念はそこです。

 

 

2012~2013年の全国的流行では、結果的に2012年10月~2014年10月の間に45例の先天性風疹症候群が確認されました。今回の流行でも、すでに障害を持って生まれた赤ちゃんが報告されています。予算を付けて定期接種化したのに同じような結果となってしまったら、国はどう説明するのでしょうか?

 

 

医療法人鉄医会ナビタスクリニック

理事長 久住英二

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