-盲腸、軽く見ているとキケン。「役立たないから取ってもいい」器官なの?-

2019.01.17

取ってしまえば終わり、などと軽く見られがちな盲腸(虫垂炎)。でも油断すると命を落としかねない深刻な事態に。腸がんリスクとの関係も言われています。

 

 

【まとめ】

 

☆虫垂炎は盲腸から突き出た虫垂が細菌感染して炎症をおこしたもの。多くは、当初みぞおちあたりが痛み、次第に右わき腹に痛みが移ってきます。

 

☆初期で炎症が軽ければ抗菌薬で散らすことが可能。でも鎮痛剤などで誤魔化していると悪化して腸に穴が開き、腹膜炎に。命の危険も。

 

☆虫垂炎を経験した人は大腸がんなど腸のがんになりやすい、という報告があります。炎症を長引かせるのはNG。いずれにしても早めの受診が肝心です。

 

 

 

 

先日亡くなられた女優の市原悦子さん、直前に発表していた病名が虫垂炎(いわゆる「盲腸」)です。

 

 

「盲腸なんて別になくてもいいんだから、取ってしまえば終わり」「取るまでもなく薬で散らせる」などと言われ、あまり深刻に捉えられないことも多い病気ですね。

 

 

それだけに今回の日本を代表する女優さんの急逝には、ショックを受けた方も多いかもしれません。

 

 

何がどうなって命の危険に繋がるのか、本当に取ってしまえばよい役に立たない器官なのか。張顔との関係も言われています。これを機に知っておきましょう。

 

「盲腸」「虫垂」ってどこ? 違う場所が痛んで発見が遅れることも!

 

 

虫垂炎は、文字通り虫垂の炎症です。虫垂は、小腸が大腸につながるあたりの盲腸という部分(ちょうど右の下腹部の位置)から、ぶら下がるように突き出た器官。直径3~5㎜、深さ5~7cmほどの指サックのような袋状をしています。

 

 

 

その袋に、便のもとや種などの異物などがたまってふさがると、細菌が繁殖します。そうして炎症を起こしたものが、虫垂炎です。

 

 

典型的な症状は、腹痛初期はおなか全体、特にみぞおちに痛みを感じ、それが24時間以内に右下腹部に移るケースがよく見られます。

 

 

みぞおちが痛むと、つい胃炎などと間違いやすいもの。ついそのまま放置されがちです。2~3日様子を見ているうちに痛む部位が右下に移動したら、いよいよ虫垂炎を疑った方がよさそうです。

 

(Shutterstock)

 

 

また、人それぞれ虫垂の伸びている方向が微妙に違うため、歩く時に痛みが強くなる人もいますし、腰痛を伴うことも。

 

 

虫垂炎は乳児にはまれで、幼児期以降、特に10歳代後半から20歳代に多くなります。ただ、中年以降は若い頃より重症化して命の危険にさらされやすくなります。

 

 

生活環境にも関係があり、先進国に多く、過労や暴食の後に起こりやすいとされます。

 

 

早期なら薬で治療。でも、ひどければ命を落とします!

 

 

腹痛の他、37℃台の微熱が続いたり、吐き気・嘔吐便秘などがあったりします。

 

 

発熱は全く起きないこともあります。吐き気・嘔吐は、虫垂炎による周囲への刺激で起こるので、炎症が進んでいることが疑われます。便秘は炎症で腸の運動が低下して起こります。

 

 

腹部の痛みは、初めのうちは鎮痛剤を飲むと一時的に良くなりますが、そうしているうちに悪化して、最悪の事態になりかねません。

 

 

急な高熱、お腹の力を抜けないほどの痛み、右下腹部を押さえてから急に放すと痛みが強くなる、痛みの範囲が右の下腹部からお腹全体に拡がった、などという場合は、緊急手術が必要な状況。

 

 

 

炎症によって虫垂の壁に穴があき、膿(うみ)がおなかの中に拡がって、腹膜炎を起こしている可能性が高いためです。手術でお腹を開いて、中を水で洗わねばなりません。

 

 

とにかく腹膜炎を起こしてからでは厄介なので、痛みが軽いうちに受診することが鉄則です。

 

 

ただ、小さなお子さんや妊婦さん、高齢の方は、どうしても診断が遅れがち。小さい子は症状の訴えが分かりづらい、妊婦さんは痛みが右上にずれることがある、高齢者は腹膜炎を起こしていても発熱しないことがある、といったケースが多いためです。

 

 

 

注意して見守る必要がありますね。

 

 

虫垂炎の経験者は腸がんにかかりやすい!?

 

 

治療は、症状が軽くて検査でも大きな異常が見つからなければ、抗菌薬で治る(いわゆる「薬で散らす」)こともあります。痛みや炎症の拡がりを抑えるには、痛みのある右の下腹部を皮膚の上から冷やすことも有効です。

 

 

一方、症状が強く、炎症も強い場合は、手術です。ただ最近では、入院期間も短く、傷あとも小さく目立たない「腹腔鏡下手術」が主流となってきています。

 

(Shutterstock)

 

 

さて、手術に関して、「虫垂なんて特に役立たないんだから、取ってしまって問題ない」とは、昔からよく聞きますよね。

 

 

たしかに虫垂は、進化の過程で退化した器官とされています。そのため、短期的には虫垂を切除しても支障ないというわけです。

 

 

ただ実は、何の役にも立っていないわけではなく、免疫機能に関係する器官であるとも見られています。虫垂を切除された人は、「潰瘍性大腸炎」という自己免疫の異常による疾患になりにくい、という報告もあるのです。

 

 

それでも虫垂炎となれば、炎症が強いなら迷わず手術をすべき

 

 

特に近年の研究では、虫垂炎とがんとの関連も調べられています。

(Shutterstock)

 

 

2015年に発表された台湾の研究では、虫垂の切除をした約7.6万人と、切除をしていない約30万人を14年間近く追跡調査しています。その結果、切除をした人は術後1年半~3年半の間だけ、大腸がんリスクが2.1倍になりました(その後は手術をしていない人とリスクは同等となりました)。

 

 

さらに、虫垂炎で抗菌薬など手術以外の治療法を選んだ人でも、腸がんリスクは4倍に上がることが、2017年のスウェーデンの研究で報告されています。虫垂切除以外の治療法を選んだ約13,600人の患者のうち、約350人が虫垂がん・大腸がん・小腸がんを発症。特に虫垂がんと右側大腸がんのリスクが高くなっていました。診断の難しさや、長年の炎症が関連していると見られています。

 

 

これらの研究からは、少なくとも虫垂炎と腸がんに何らかの関連性がありそうなこと、そのため虫垂の炎症を早いうちにきっちり抑えることががん予防にも大事である、といったことが言えそうです。

 

 

数日間続く腹部の痛みなど、一過性ではない異変を感じたら、鎮痛剤などに頼らず早めに受診するようにしてください。

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