昨年末から流行しているのは、はやり目だけではありません。リンゴ病について解説します。(川崎院院長・河野一樹)
【まとめ】
☆インフルや、前回のブログのはやり目だけでなく、リンゴ病も昨年末から流行が続いています。特別な治療法はありません。
☆ほっぺが真っ赤になるなど症状が出てからは、人にはうつりません。それまでにウイルスをばら撒いてしまい、ワクチンもないので、予防は困難です。
☆妊婦さんがかかると、風疹以上の割合で胎児に影響し、流産も起こりやすく。近しい人に患者が出たら、妊婦さんは産科で相談してください。
実は昨年末から流行っているリンゴ病。どんな病気?
インフル流行のニュースが相次いでいますが、実は昨年末からリンゴ病の流行も続いています。原因は、「パルボウイルスB19」というウイルスへの感染です。
国立感染症研究所によれば、昨年末の時点で、リンゴ病(正式には「伝染性紅斑」と言います)の患者数は過去5年間の同時期の平均と比較してかなり多くなっています(グラフ)。特に宮城県、東京都、岩手県、新潟県で流行しているようです。
リンゴ病は両方の頬(ほっぺた)が真っ赤に腫れ、まるでリンゴのように見えることから、そのように呼ばれています。同時に、腕や脚も網目状に赤くなります。
(Shutterstock)
赤く腫れる以外の症状として、まれに関節の痛みや、手足のむくみ、発熱が続くことがあります。
子供の病気と思われているかもしれませんが、かかったことがなければ大人もかかります。ただ、症状が顕著に表れにくいこと(不顕性感染)がほとんど。まれに子供同様の症状が出る場合もありますが、膠原病や他の悪性疾患にも似ているため、鑑別が必要になります。
意外!? ほっぺが赤くなるころには感染力なし。そのせいで予防は困難。
リンゴ病が意外かつやっかいなのは、ほっぺが赤くなるなど発疹が出現した時点では、ウイルスの排泄はなくなっている、という点。つまり、症状が出て感染したことに気づいた時には、すでに感染力はなくなっているのです。
ですから、ほっぺが真っ赤でも本人さえ気にせず、元気であるなら、登園や登校は差し支えありません。
問題は、症状が目に見えて現れないうちに、ウイルスはばら撒かれている、ということ。
(Shutterstock)
潜伏期間は2週間。ほっぺが真っ赤になる1-2週前に、ウイルス血症を起こしてインフルと同じような症状が出ることもあるのですが、通常は無症状で過ごしてしまいます。
実はこの時期がウイルスの排泄が多く、感染力が強い期間。でも、本人も周囲も、誰も気づかないまま、人にうつし、うつされ、感染が拡がってしまうのです。
治療法やワクチンもなし! 妊婦さんにとっては風疹よりも高リスクです。
リンゴ病は自然に治る疾患です。ただ、特別な治療やワクチンはありません。疾患を予防することもできません。
感染に注意すべき人は、妊婦さん、溶血性貧血の患者さん、免疫不全の方です。
特に妊婦さんに感染した場合、約4%の胎児に胎児貧血や胎児水腫を起こし、流産のリスクが高くなります。
妊娠中にかかって胎児に影響が及んでしまう病気として、風疹のリスクはだんだん知られるようになってきました(朝ドラの影響は大きそうですね)。しかし数からいえば、予防法のないリンゴ病の方が高リスクなのです(表)。
日本人の妊婦さんのうち、リンゴ病に対する抗体を持っているのは2~5割とされます。
子供のころにリンゴ病にかかった記憶・記録のない妊婦さんは、家族など近しい人が感染した場合、産科に相談してください。場合によっては血液検査の上、感染の疑いがあれば定期的に胎児の様子をチェックしてもらう必要が出てきます。
なお、妊娠早期の感染が問題で、妊娠28週以降では胎児貧血や胎児水腫の発生率は低くなっています。
もう少し詳しく知りたい妊婦さんやそのご家族は、以下から妊婦さん向け感染予防啓発パンフレットもダウンロードできます。
「パルボウイルスB19によるリンゴ病の感染予防について」(神戸大学)
必要以上に怖がる必要はありませんが、妊婦さんやそのご家族、妊娠を考えていらっしゃる方は、知っておくと良いですね。
ナビタスクリニック川崎 院長 河野 一樹