-インフルの陰で、実は流行っている「はやり目」。原因は夏風邪と同じウイルス?-

2019.01.11

「はやり目」は主にアデノウイルスによる結膜炎。夏が一番の流行時期ですが、今季は冬も再び患者が増えています。

 

 

【まとめ】

 

☆インフルの流行に関心が集まっていますが、はやり目(流行性角結膜炎)の患者さんも、例年以上に増加した状態が続いています。

 

☆主な原因は夏風邪で知られるアデノウイルス。ただし型が違うので、症状は主に目に限られます。目が開かない状態になったり、角膜が濁って物が見えづらくなることも。

 

☆特効薬はありません。多くは2週間程度でなおりますが、角膜の濁りの回復には半年以上かかることもあります。手や物の消毒を徹底し、目を手で触らないようにしましょう。

 

 

 

実は昨年5月から大流行、一年中かかるって知ってた?

 

 

国立感染症研究所の発表によれば、この冬は「はやり目」(流行性角結膜炎)が例年を大きく上回る勢いで流行しています。

 

厚労省/国立感染症研究所 感染症発生動向調査

 

 

グラフには、2018年1月から1年間の患者数の推移が示されています。週ごとの患者数は青い棒グラフ、過去5年間の平均値は緑色の折れ線です。

 

 

こうして見ると、はやり目は昨年5月に(第19週頃から)大流行し、そこから徐々に収まりつつあったものの、なかなか平年並みで落ち着くことはなく、11月末からまた大きく患者を増やしています

 

 

主な原因となるのが、アデノウイルス夏風邪の原因としてよく知られるウイルスです。

 

 

それが目にも異常を起こすなんて、ちょっと信じられないですよね。実は、アデノウイルスには、インフルエンザウイルスと同じように「型」がたくさんあるのです。(これまでに51種類も見つかっています)

 

 

夏風邪(主に咽頭結膜熱、いわゆる「プール熱」)を起こすアデノウイルスと、はやり目を起こすアデノウイルスは、型が違います。また、そのほかに、胃腸炎や血尿を伴う膀胱炎を起こす型も複数知られています。

 

 

 

ひどければ角膜ににごりも! しかも一年中、油断できません。

 

 

はやり目は、主に両目の「結膜」と呼ばれる粘膜に炎症が起きたもの。結膜は、白目の表面からまぶたの裏側までを覆っていて、炎症が起きると、充血したり、涙が出たり、目やにが多く出る、まぶたが腫れる、まぶたの裏側に小さなぶつぶつが出来る、などします。

 

ひどい場合は、急に白目が真っ赤になり、大量の目やにが出て、朝起きたときにまぶたにはりついて目が開かないことも! まぶたの裏の結膜に偽膜という白い膜ができて癒着をおこす、といった事態も起こります。

 

 

プール熱のような発熱やのどの痛みはほとんどありませんが、耳の前にあるリンパ節が腫れ、触ると痛む場合もあります。

 

 

こうした結膜炎の症状は、通常は2~3週間で治まります。しかし、ひどい場合は角膜にまで炎症が及びます。

 

 

角膜は、黒目を覆う粘膜で、視覚に直接的に影響します。黒目の表面がすりむけて目がゴロゴロしたり、とても痛くなったりする「角膜びらん」や、1~2週間で角膜に点状のにごりが出てきて、目が見えにくくなる「点状表層角膜炎」が起こります。

 

感染経路は、手やタオルなどの目に触れがちな物患者がウイルスに感染した目を手でこすると、手に大量のウイルスが付きます。その手で触れた物にウイルスが付き、そこを他の人が触れ、その手で無意識に目に触れると、粘膜からウイルスが侵入するのです(接触感染)。

 

 

潜伏期間は8~14日と長いのも特徴です。どこでか分からないけれど、いつの間にかもらってしまっていた、ということも多いのです。

 

 

こうしたやっかいな「はやり目」は、実はもともと一年中“はやる”可能性があり、年齢に関係なくかかります

 

 

ウイルス性の結膜炎に特効薬はありません! 学校にも行かれません・・・予防するには?

 

 

結膜炎は片方の目に発症して、4~5日後に、もう一方の目にも同じ症状が出てきます。1週間前後で症状のピークを迎えて、その後だんだん軽くなり、2~3週間で治ります

 

 

 

残念ながら、今のところ特効薬はありません感染したウイルスに対する免疫ができて、自然に治るのを待つしかないのです。ただ、他の病気の可能性もありますし、ただ放っておくといじったりして悪化させたり、感染を拡げたりすることがあるので、早めに眼科を受診しましょう。

 

 

角膜の濁りも自然に消えることが多いのですが、重症の場合はステロイド点眼薬を使用します。角膜のにごりは結膜炎が治った後も長引き、回復までに数ヶ月~1年かかる場合も

 

 

アデノウイルスは感染力が非常に強いため、予防には手洗いや手指の消毒を徹底することが重要です。

 

 

 

特に身近に患者がいた場合、症状が治まった後も2週間程度はウイルスを排出し続けることがあるため、密接な接触はできるだけ避けたいところ。

 

 

家族に患者が出てしまったら、こまめな手洗や手指の消毒はもちろん、タオルや洗面器などの共用は避けましょう。目やにや涙を拭き取る場合は、ティッシュペーパーや清浄綿を使い、目に直接手で触れないように。その手から汚染が拡がってしまいます。

 

 

ドアノブや手すり、おもちゃなども、できるだけ頻繁に消毒用エタノールや薄めた塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム0.02%)で消毒しましょう。

 

 

 

なお、はやり目(流行性角結膜炎)は、学校保健安全法上の学校感染症の一つ。つまり、お子さんがかかった場合、他の人への伝染の恐れがなくなるまで登校禁止となってしまいます。

 

 

この時期、感染症予防にとマスクなどして経口感染には気を遣うものですが、目も同じように用心してくださいね!

 

 

(参考サイト)

●国立感染症研究所 アデノウイルス解説ページ

●日本眼科医会 流行性角結膜炎

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