年末からインフル患者が急増中。久住医師が急きょ報道ステーションに出演し、新薬ゾフルーザについて解説しました。
【まとめ】
☆全国的に乾燥と冷えによりインフル患者が急増中。年末には1週間に45万人、現在でもそれ以上に増えています。
☆タミフルやリレンザに加え、注目は新薬ゾフルーザ。価格は高めでも、1回飲めば効く錠剤、という使いやすさが人気の理由。でもなぜ1回でいいの?
☆効き目が長い、ということは副作用があった場合にはリスクにも。気になる副作用は? また、予防接種は受けた方がいいの?
乾燥日本、インフルエンザ患者が急増中!
東京ではこのところ、日中の湿度が30%を下回ることも珍しくないほど乾燥しています。気温も朝方は氷点下まで落ち込む寒さとなっています。そんな中、インフルエンザ患者が急増中。昨年末(12月24~30日)のインフルエンザ患者発生数は、45万人とも推計されます。
その状況をざっくり示したのが以下の「インフルエンザ流行レベルマップ」(国立感染症研究所感染症疫学センター作成)。都道府県ごとに、警報レベルを超えている保健所の割合が赤系の3段階で、注意報レベルを超えている保健所の割合が黄色系の3段階で塗り分けられています。
日本では、全国約5,000の定点医療機関のインフルエンザ患者数が、厚労省のシステムによって毎週把握されています。過去の患者発生状況をもとに基準値を設け、保健所ごとにその基準値を超えると注意報や警報が発生する仕組みになっているのです。
実はこの地図、昨年11月末~12月頭には、まだ真っ白でした。それが12月中に黄色系の都道府県が増え、今ではさらに赤系に次々置き換わっているのです。ちなみに、今流行が始まったのは、Aソ連型とのこと。
こうした状況を受け、テレビ朝日の報道ステーションにナビタスクリニック理事長の久住英二医師が出演。インフルエンザの特効薬について解説しました。
(報道ステーション)
新薬ゾフルーザは、なぜ1回飲むだけで効くの?
インフルエンザの特効薬と言えば、おなじみはタミフルやリレンザです。
タミフルは錠剤で、1回1錠、1日2回を5日間服用します。リレンザは吸入薬で、1日2回、5日間吸入します。
そのほか、イナビルという吸入薬も9年ほど前からあります。こちらは実は1回の使用で済むのですが、小さいお子さんやお年寄りには吸入薬は使いづらく、また薬価が3割負担で1284円と高め(タミフルは3割負担で816円、リレンザは3割負担で883円)なこともあって、先の2つに比べると処方は少ないようです。
さて、注目は昨年3月発売の新薬「ゾフルーザ」。
1回飲めば効く錠剤であることから、今シーズンではすでにインフル特効薬シェアNo.1となっているようです。
毎日2回を5日間のタミフルやリレンザと、たった1回の使用でいいゾフルーザ、使いやすさがだいぶ違いますね。その理由は、薬の体の中での働き方が大きく違うことにあります。
そもそもインフルエンザは、インフルエンザウイルスが鼻やのどの細胞に入り込み、そこで増えて、他の細胞に拡散していくことで発症します。
従来のタミフルやリレンザは、このプロセスのうち、他の細胞への拡散を防ぐもの。言ってしまえば、細胞内で何かをしてくれるわけではなく、ウイルスが増えていくことについては手をこまねいて眺めているしかありません。そしてようやく細胞外に出てきたところを迎え撃つのです。
一方のゾフルーザは、細胞に入り込み、いきなり細胞内でのウイルス増殖を抑え込みます。
(報道ステーション)
ですからタミフルなどに比べてウイルス減少に即効性があるのも特徴。ウイルスが体内から検出されないレベルまで減る(=他の人にうつすリスクが下がる)までの時間も、タミフルは72時間だったのに対し、リレンザでは24時間と大幅短縮されています。
ゾフルーザ服用でも登校・出勤はちょっと待って。副作用は大丈夫?
ただし、登校や出勤のタイミングは必ずしも早められません。
「ウイルスが減るのは早いのですが、服用後にすべての症状が治まるまでの時間は、タミフルなどの従来薬とゾフルーザで、それほどに違いません。また、うつすリスクが下がると言っても、ウイルスがゼロになるわけではないのです。ですから24時間我慢すれば学校や会社に行ってもよい、というわけではありません」
と久住医師。
「実はゾフルーザでも10%弱の方には耐性ウイルスが確認されているので、効かない場合もあるのです。ですから症状が治まるまではしっかり休んでいただくほうがよいですね。ただ、たしかに家族の中での感染を防ぐという意味では、ゾフルーザの方が期待できると言えるでしょう」
さらに、効き目の持続性については注意点も。
「1回飲めば効く、ということは、薬が長く体内にとどまって働き続ける、と言うことです。何度も薬を飲まずに済むのは確かに大きなメリットなのですが、もし何か副作用が出てきた場合に途中で薬を体内から除去できない、というリスクでもあります」
その点、タミフルなど効き目が短いものは、そうしたリスクが低いとも言えますね。ゾフルーザの副作用については、1%の方に下痢が報告されています。
(報道ステーション)
「それ以外、現時点では重大な副作用の心配は特にないと考えられています。ただ、副作用は市販後調査が大事になってきます。実際に10万人、20万人と患者さんが服用されてみて、初めて問題の有無が明らかになることも多いのです。そういう意味では、まだ副作用は明らかになっていないとも言えます」
気になる価格は? そもそも予防が一番、手洗いと睡眠がカギです!
ただ、ゾフルーザの価格は3割負担でも1錠1437円。タミフルが3割負担で816円、リレンザが3割負担で883円なのと比べると、かなり高めの印象。これについて久住医師は、
「もともとタミフルやリレンザも、もっと価格は高かったのです。しかし、薬価は発売から年数が経過すると下がっていくものなので、今は低価格になっているんです。またタミフルについては、今季からジェネリックも販売されていて、さらに半分くらいの価格です」
と説明します。価格を選ぶか、使いやすさを選ぶか、選択肢がますます広がったとも言えそうですね。
(報道ステーション)
さて、特効薬の選択肢が増えたのは朗報ですが、そもそもインフルエンザにかからないのが一番ですよね。ただ、予防接種については「受けたのにかかった」と言う人が一定数必ずいるのも確か。だったら受けなくてもよいのでは、と思ってしまいがちですが・・・。
「インフルエンザの予防接種を受けた場合、大人なら半分に、子供なら3分の1くらいに発症者が減ります。ですから、ワクチンはやはり有効です。」
また、「予防接種を受けたことがないけれど、毎年まったくかからない」とうそぶく人もいますよね。
「それは、本当は皆さんかかっているんです。でも、感染しても発症していない。そういう方が、集団の内外にウイルスを運んで拡げている可能性があるので、本当は皆さんで予防接種を受けていただきたいのです」

(Zivica Kerkez/shutterstock)
あとは、外出後や食事前の手洗いの徹底。そして「睡眠をしっかりとること」。睡眠時間が足りないと風邪をひきやすくなることが分かっているそうです。
睡眠に関しては時間だけでなく質も重要。
その際に注意したいのがお酒です。寝酒を習慣にしている人も少なくありませんが、久住医師によれば、飲酒には問題が2つ。
①鼻がつまりやすくなり、口呼吸になって喉が乾燥し、感染しやすくな
②アルコールは睡眠の質を下げることが分かっている
とのこと。新年会シーズンですが、インフル対策の上でもお酒はほどほどがよさそうですね。
以上、本格的な流行に突入しつつある今、薬についても予め知識を持っておくといざと言う時に混乱しないで済みますね。もちろん、手洗いなどの予防策も改めて徹底していきましょう。