ナビタスクリニック新宿院・院長の濱木珠恵医師が、鉄不足解消のための食事を解説。この季節にピッタリな調理法、ぜひ採り入れてみてください。
【まとめ】
☆鉄不足の日本人。健康と美容のために鉄補給を増やすには、レバーや赤身の魚や肉、貝類がオススメ。ホウレンソウなど野菜からの鉄分はビタミンC食材と一緒に摂って。
☆鉄分の豊富な食材を使うだけでなく、鉄鍋や鉄フライパンを使った調理なら、溶け出した鉄分を食事と一緒に自然に摂取できます。
☆鉄鍋料理にお酢を加えることで、より鉄分が溶け出しやすく。鉄鍋が使いづらいなら、「鉄フィッシュ」を利用しましょう。
元気はつらつ健康体と、血色のいい美しい笑顔。決め手は「鉄」!
貧血についての私の院長ブログは、久しぶりの更新となりました(別のテーマでは登場させていただいてましたが)。
まずは前回(こちら)のおさらいです。
●赤血球に含まれる鉄が、体中に酸素を運んでいる。だから、貧血=鉄不足=酸欠に。
●貧血=酸欠だから、動くとすぐクラクラ、ぐったり、おっくうに。
●血液検査では、「平均赤血球容積」(MCV)と「ヘモグロビン濃度」(Hgb)をチェック。
●MCV=赤血球の大きさ。基準値(大体80~101fL)以下は、鉄不足で赤血球が“小粒”になっているということ。
●Hgb=ヘム鉄とタンパク質から作られ、酸素と結びつく「色素タンパク質」。基準値(おおよそ11.2~15.2g/dL)以下だと、鉄分不足。
(NHK「美と若さの新常識SP『増やせ!元気でかわいい赤血球』」)
鉄不足だと、血液の色は白っぽく見えて血色が悪くなります。酸欠だと黒っぽくなり、さらに顔色が悪く・・・。鉄不足は、美容にも直結しているんですね。
そのことは、出演させていただいたNHK番組「美と若さの新常識SP『増やせ!元気でかわいい赤血球』」でもご説明しました。
では、どうしたら鉄不足を解消できるでしょうか? ポイントは食材と調理時の工夫です。
動物性タンパク質を積極的に。植物性の鉄分は、ビタミンCと一緒に。
閉経前は1日当たり10.5gの鉄分摂取が必要なところ、実際には平均で7.5g弱しか摂れていない日本人女性。しかも、汗や便から毎日1mgは吸収されずに体の外に出て行ってしまいます。そこに毎月の生理が加われば、鉄不足は既定路線です。
鉄不足の改善に最も効果的なのは、食事内容の見直しです。
よく言われることですが、やはりお勧めはレバー。特に豚や鶏のレバーに鉄が豊富です。量的には、焼き鳥屋さんで、豚レバーなら2串、鶏レバーなら3串食べれば十分。
「レバーばかりそんなに食べられない」という方、多いでしょう。大丈夫です。レバー以外なら、牛ヒレなどの赤身肉や、マグロやカツオなどの赤身や貝類に、鉄が多く含まれます。
「でも、ほうれん草やひじき、のり、大豆なんかにも鉄は豊富、って聞いたけど」という方、それも正解です。ただし、肉など動物性タンパク食品に含まれる鉄分は「ヘム鉄」、野菜など植物性食品に含まれる鉄分は「非ヘム鉄」と、種類に違いがあるのです。
肉に多いヘム鉄は、小腸でそのまま吸収することができます。そのため吸収率は15~20%。一方、ほうれん草などに多い非ヘム鉄の吸収率は、わずか2~5%。平均的に見てもざっくり5~6倍もの差があるのです。
「じゃあ、植物性食品の鉄分は意味がないの?」と思われるかもしれませんが、ここで吸収を高めるポイントがあります。
ビタミンC食品と一緒に摂るのです。
非ヘム鉄は、消化の過程でビタミンCなどの助けを借りて、ヘム鉄に変換されます。そうなれば後は一緒。ですから、ビタミンCが豊富なパセリやブロッコリーなどの緑黄色野菜や、柑橘類などの果物も、献立に含めるといいですね。
「鉄なべ調理+お酢」の最強コンビで、どんな食材でも鉄補給できる!
でも、献立を考える際に、鉄のことばかり気にしているのは大変ですよね。そこで裏技。調理器具を工夫してみましょう。
昔ながらの鉄なべや鉄フライパンです。
調理の際に鉄が溶け出して、どんな食材を使った料理でも、知らないうちに鉄分補給が可能になります。
鉄フライパンは焦げ付きを考えるとちょっと使いにくいかもしれませんが、鉄なべなら大丈夫。すき焼き鍋は鉄ですよね。でも、すき焼きだけでなく、色々な鍋料理を鉄なべで作ることをお勧めします。
なお、鉄なべをお持ちでない方や、重くて使いづらい、という方には、鉄でできた魚「Lucky Iron Fish」が便利です。
(WIRED)
調理時に鍋に入れるだけで貧血を改善できる、まさに魔法の魚。かつて人口の半分が貧血で悩んでいたカンボジアで、人々を救っているアイテムでもあります。日本にも鯛をモチーフにした同じような商品があるようですね。
また、先の番組では、鉄なべ調理の際に、酸性の調味料の代表格である「お酢」を加えることも紹介されました。酸で鉄が溶け出しやすくなるためです。
研究では、食酢を加えた場合に鉄鍋等から溶け出した鉄の98%がヘム鉄で、しかも安定性に優れていたそうです。
また、調理時間が長いほど多く溶け出していた一方、油調理では溶け出す鉄は少なかったとのこと。
これからの時期、鉄なべを使った鍋料理が、元気と美しさの源になりそうですね。隠し味に是非、お酢を忘れずに!
濱木珠恵 著 (主婦の友社)
貧血で血が足りないオトナ女子=ドラキュラ女子が急増中!?あなたの抱えている不調、実は貧血が原因かも!
ナビタスクリニック新宿 院長
濱木珠恵(はまき・たまえ)
※次回のナビタスブログ更新は、新年1月7日です。開設から半年余り、お読みいただきありがとうございました。皆様よいお年をお迎えくださいませ。