前回のしじみエキスと並んで忘年会シーズンに引っ張りだこのウコン。でも、こちらも長期間摂り続けることで、かえって肝臓を傷めてしまうかもしれません。
【まとめ】
☆ウコンは、通常の食事から摂る程度の量であれば安全。ただし、有効性について立証されているのは消化不良の改善効果くらい。
☆ウコンの健康成分とされるクルクミン(ポリフェノール)。しかし、有効性・安全性ともに信頼できるデータは見当たらず・・・。
☆「〇〇エキス」「××抽出物」は曖昧模糊。購入前に「成分表示」「含有量」「問い合わせ先」の確認を!本来は食事からの摂取が一番です。
通常の食事からなら安全。ただし立証されている効果は、消化不良改善くらい・・・
ウコンは、カレーの黄色を出すスパイス「ターメリック」としても知られる植物(秋ウコン)。通常は、根の部分を乾燥させて粉末にして使います。
一般に「肝機能を向上させる」と言われ、近年は二日酔い予防などの効果を目的に、ドリンク剤や錠剤が手軽に手に入りますね。
実際、古くから伝統医学や民間療法でも使われて来ただけでなく、近年の研究でも、脂質異常、消化不良、関節の痛み、皮膚のかゆみ、月経などが改善されたとの報告もあります。
しかし全体として見ると、試験ごとに結果のバラつきが大きく、科学的に立証されているのは消化不良改善くらい・・・。
では、安全面はどうでしょう?
結論から言えば、国立健康・栄養研究所の「『健康食品』の安全性・有効性情報」では、「通常の食事として適切に摂取した場合、おそらく安全である」とされています。
ただ、細かく見ていくと、摂り方によっては健康を害することも。代表的なものは、消化不良、下痢、膨満感、胃食道逆流、吐き気、嘔吐、不整脈、便秘、めまい、といったところ。アレルギー症状として出ている場合もあります。
もっと深刻なところでは、肝機能障害(死亡例も)や皮膚疾患(皮膚炎、痒み、水疱など)の事例も多く報告されています。
これらの症状が出たケースの多くは、粉末やウコン茶、また「ウコン抽出物」や「濃縮ウコンエキス」を原材料とする錠剤やドリンク剤などを、サプリメントとして常用していました。カレーのスパイスなど普通の食事から摂る何十倍何百倍もの量のウコンを、継続的に摂取していたのです。
この他、慢性疾患を抱えている人は特に注意が必要。胃潰瘍や胃酸過多、胆道閉鎖症の場合は、ウコンは絶対にNGとされています。それ以外でも、薬を常用している人は、飲み合わせが悪いと薬の効き目を妨げたり、副作用に繋がったりするので注意が必要です。
「クルクミン」って何? ウコンそのものを摂るより効くの?
さて、シジミのオルニチンと同様、ウコンの健康成分の主体として近年、「クルクミン」に注目が集まっています。配合してあることを強調したサプリやドリンクなどもよく見かけますよね。
クルクミンは、ウコンの黄色い色素であり、ポリフェノールの一種です。
ウコン以上に「抗酸化作用がある」「肝臓によい」「発がんを抑制する」などと様々な効能が言われ、研究が行われています。
たしかに、炎症の抑制(IL-6やTNF-αなど血中の炎症性物質濃度の低下)や、血中脂質濃度の正常化、うつ病の改善などの効果が報告されています。
しかし総じて見れば、ウコンそのものと同じく、研究結果にバラつきが大きいと言わざるを得ません。
以上から、「『健康食品』の安全性・有効性情報」ではクルクミンについても、ヒトでの有効性について「信頼できるデータは見当たらない」としています。
安全性についても、ウコンとほぼ同じ。
肝機能障害や皮膚炎の発症が多く見られ、乾癬(皮膚疾患の一種)の悪化や心臓疾患なども。また、やはり様々な薬との飲み合わせで問題が生じることがあるようです。
(Shutterstock)
ウコンにしても、クルクミンにしても、しじみエキスと同様、安易に摂り続けることはリスクを伴うと考えておいた方がよさそうですね。
「~抽出物」「~エキス」は効きそうだけど・・・購入前にチェックしてほしい3項目。
さて、しじみやウコンのサプリのように、商品名や原材料名に「エキス」「抽出物」などとあると、成分が濃縮されていて、より効果が得られそうに見えます。
でも、「エキス」や「抽出物」と言った場合、それだけでは、含まれる具体的な物質名やその量は分かりません。
例えば原材料名に「ウコン抽出物」とあっても、それだけでは「どれくらいの量のウコンから」「どのような抽出方法で」「何を抽出したのか」「実際どれだけ期待する成分が入っているか」、分からないことだらけです。
そこで購入前に確認してほしいのが、以下の3点です。
1.成分名
何が入っているのか分からなければ、安全性も有効性も、判断しようがありません。また、複数の成分が配合されている製品は、一度に多くの効果が得られそうに見えますが、成分同士の相性が悪くないかどうか、きちんと検証されていない場合も懸念されます。
2.含有量
主要な成分の含有量が表示されていない製品は、品質管理に問題があることも。実際、成分名表示はあっても含有量表示のない製品を分析したところ、その成分が入っていない悪質なケースもあったようです。
3.問い合わせ先
成分や含有量など、製品についての質問や、摂取していて問題が出てきた場合の問い合わせ先はきちんと書かれているでしょうか。そうした製造者や販売者、輸入者などについての表示は、食品衛生法で決められています。お客様相談室などが設置されている場合もあります。
こうした表示を確認の上、信頼のおける製品を、用法に従って正しく使うのが基本。ただ、素人の判断で特定の製品や成分を、長期にわたって高用量で取り続けることはお勧めできません。サプリメントを習慣的に使いたい場合は、ぜひかかりつけ医にご相談ください。
でも、シジミにしても、ウコン(ターメリック)にしても、できれば食事から摂りたいもの。その方が過剰摂取や不必要な常用を避けられ、最も健康的と言えそうですね。
《参考サイト》