-加湿器の落とし穴! 病原菌をばら撒き、カビを大繁殖させないために。-

2018.12.13

湿度が急激に低下し、加湿器が活躍する季節となりましたが、加湿器の選び方や使い方を誤るとかえって健康を害し、本末転倒に。ポイントをまとめました。

 

 

【まとめ】

 

☆インフルの感染力は多湿環境下でも弱まらないという研究結果。でも、粘膜のバリア力を高めるためには、やはり湿度の維持が大事です!

 

☆加湿器の選び方や配置を誤ると加湿能力が不十分に。それだけでなく、病原菌やカビを室内にまき散らし、肺炎やアレルギーの原因に!?

 

☆タンクの水が殺菌・除菌されるタイプの加湿器を選んで。加湿すると結露が増えてカビの危険も。対策には、掃除が最重要。

 

 

本題の前に。インフルウイルス、実は湿気に弱くないという驚きの研究結果。

 

 

前回もお伝えしたように、東京を始め関東地方は乾燥する季節に突入しました。これから2月まで太平洋側は乾燥した日が多くなります。例年、冬の間は湿度が20%台という日も珍しくありません。それと同時にインフルエンザや風邪の流行が広がっていきます。

 

 

これまで、インフルエンザウイルスは、湿度が高いところでは生きられないと考えられてきました。それを示す実験もいくつもありました。だから湿度の低い冬に流行するのだと考えられてきたのです。

 

 

ところが今年の夏に発表された研究(原著論文はこちら)は、そうした常識を覆すものでした。

 

 

研究では、インフルエンザ(A型、H1N1)の患者と同じ部屋にいる状態を再現すべく、空気中にインフルウイルスが浮遊した状態を金属性のドラム内で作り出し、湿度を7段階=23%、33%、43%、55%、75%、85%、98%と変えて実験しました。すると、予想に反して、どの湿度でもインフルウイルスの感染力は弱まらなかったのです。

 

 

ただ、前回の記事でもお伝えした通り、湿度を高め(50~60%)に保つことは、直接にインフルエンザや風邪のウイルスに影響する以外に、喉のバリア機能を高める効果があります。インフルエンザや風邪、呼吸器系感染症の予防には、やはり加湿は欠かせないと考えておくべき。

 

 

そこで活躍するのが加湿器です。

 

 

それでも加湿器の種類を考えないまま選び、適切なお手入れを怠ったりすると、かえって健康を害する結果になるので注意が必要。以下、加湿器の種類と使う上での注意点をまとめてみます。

 

 

加湿器、種類と使い方によっては、病原菌をばら撒くことに・・・

 

 

一番問題になるのは、加湿器の内部の水。タンクや水の通り道にたまった水が、緑膿菌、アシネトバクター、レジオネラなどの菌で汚染されやすいことです。

 

 

これらの菌は比較的どれも身近にいるもの。ただ、院内感染の原因としても知られ、抵抗力が下がっている人では感染して肺炎などを引き起こすことが報告されています。

(イメージ画像/Shutterstock)

 

 

そのことを念頭に、加湿器の種類をチェックしていきましょう。それぞれにメリット、デメリットがあります。

 

 

【スチーム式】

 

お湯を沸かして、その蒸気で室内を加湿する仕組み。

 

〇メリット

沸かすことで雑菌が死滅するため、清潔。

加湿能力も高い。

 

✕デメリット

吹き出し口が熱くなるため、子供などには危険。

お湯を電気で沸かすため、電気代が高め。

 

 

【超音波式】

 

超音波を発生する部品を水に浸し、水を霧状にして室内に拡散する仕組み。小型の加湿器などはこの方式が多い。

 

〇メリット

省エネ。加湿能力も高い。

 

✕デメリット

殺菌されていない水が室内にばら撒かれる。

水道水の塩素も超音波で飛ぶため、内部の水分に菌が繁殖しやすい

 

(Shutterstock)

 

 

【気化式(フィルター式)】

 

スポンジフィルターに水を通し、水気を含んだ空気を送風する仕組み。

 

〇メリット

使用電力が少なく、省エネ。

 

✕デメリット

スポンジにカビが生えやすい。

運転音(送風ファンの音)がうるさいことも。

 

 

【ハイブリッド式】

 

気化式とスチーム式を組み合わせた仕組み。水を含んだスポンジフィルターに温風を通して加湿する。

 

〇メリット

タンクの水に繁殖した微生物が殺菌される

スチーム式と違い、やけどの心配がない

 

✕デメリット

気化式同様にスポンジフィルターにはカビが生えやすい

消費電力がやや高め。

 

(Shutterstock)

 

 

こうして大きく分けて見ると、病原菌をばら撒く恐れが低いのは、スチーム式やハイブリッド式と言えます。

 

 

ただ、ハイブリッド式でも、スポンジフィルターにカビが生えやすい点は気化式と同じ。タンクやスポンジをこまめに洗う必要があります。

 

 

一方、超音波式でも、タンクの水を熱以外の方法で殺菌・除菌する新しいタイプの加湿器も登場しています。紫外線を当てて殺菌したり、銀イオンで除菌したり、製品によって様々なので興味ある製品があったら確認してみると良いですね。

 

 

なお、加湿器以外に、「濡れタオルをつるす」など、生活の知恵レベルの加湿方法も聞かれますね。でも、劇的な効果が望める方法はなかなかないようです。「濡れタオル」の方法だと、湿度が数%だけ、タオルが乾くまでの数時間は改善するものの、その程度。焼け石に水と言わざるを得ません。

 

 

 

その他、「バケツに湯をはる」「霧吹きをカーテンに吹き掛ける」といった方法も言われますが、効果も持続も、ほとんど期待できないようです。

 

 

加湿+暖房で結露が悪化し、窓際がカビの温床に。こまめな掃除が不可欠!

 

 

病原菌をばら撒く心配の低い加湿器を選び、手入れをしたとしても、いくつかポイントを押さえておかないと、そもそも十分な加湿効果が得られないだけでなく、別の所にカビを生やしてしまうことにもなります。

 

 

まず、部屋の大きさに見合った加湿能力があるかどうか確認しましょう。加湿器の仕様書に載っています。空気の流れを考慮し、できるだけ風上となる位置に設置することも大事です。

 

 

その一方、加湿のせいで悪化しがちなのが結露

 

 

暖房している部屋の中央は温度が高いので、加湿によって空気中の水分が増えることで、ちょうどよい湿度になります。ところがそうして水分を多く含んだ空気が窓際で冷やされると、たちまちに水滴となって結露してしまうのです。

 

 

特に、寒いからと締め切ったまま、カーテンもしめたまま、という窓はないですか? 気づかないうちに冬なのに窓周辺やカーテンにカビが繁殖することに・・・! カビは気持ちが悪いだけでなく、吸い込むことでアレルギーや肺炎に繋がります。

 

 

湿度も保ちたい、けれど、カビは嫌だ。どうすればよいのでしょうか?

 

 

実は、答えはシンプル。こまめな掃除あるのみです。

 

 

カビは水分だけでは繁殖しません。栄養があってこそです。栄養とは、つまり汚れ。目に見えない程度の汚れでも、カビの餌になります。

 

 

ですから、窓の周りをこまめに拭き掃除し、さらに床のホコリなどが舞い上がって付くのを少しでも減らすために、掃除機もしっかりかけましょう。

 

 

加湿器を使うなら窓周りに要注意、と頭に置いておく必要がありそうですね。

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