-【院長ブログ】胃腸炎、感染を拡げないための処理のポイントとは?-

2018.11.30

感染力の強いウイルス性胃腸炎。一家そろって感染、という事態を防ぐために、正しい対応を知っておきましょう。(立川院院長・細田和孝)

 

【まとめ】

 

☆予防の基本は手洗い。「もしカメ」を2回歌いながら30秒、石鹸と、できればお湯で、指の間から爪の間、手首までしっかりと。

 

☆油断しがちなのが、手を洗った後。蛇口を触らないのが理想。乾かす際、ハンドドライヤーよりも、ペーパータオルで拭くのがより衛生的です。

 

☆子供が突然吐いた場合、他の人は別の部屋へ。ケアする人は使い捨て手袋とマスクを。塩素系漂白剤や高温スチームアイロンなどで消毒を徹底。

 

 

 

「もしカメ」を2セット歌いながら、楽しく手洗い習慣を。

 

 

ウイルス性胃腸炎の特徴がその感染力の高さ。ノロならば、わずかウイルス10~100個でうつってしまいます。

 

 

予防の基本は、とにかく手洗いです。特に子供は、どうしても手を口や鼻に持っていきがちだからです。

 

 

外出から帰ってきたら、まず手洗い。トイレの後も、当然に手洗い。そうしておいた上で、食事やおやつの前にもまた、必ず手を洗うように、小さい頃から習慣づけましょう

 

 

外出時など、携行できるアルコール除菌ジェルやシートは便利ですが、洗い流す方が断然確実。出来るかぎり水と石鹸で手洗いできる場所を探しましょう。石鹸は、薬用等である必要はありません(詳しくはこちら)。石鹸の目的は、汚れ落としです。汚れと共にウイルス等を洗い流すのを助けるのです。

 

 

正しい洗い方は、図の通り。忘れがちなのは、指と指の間、爪の間、そして手首です。そのあたりは直接口などに触れないため、油断しがち。でも洗い忘れがあると、残ったウイルスが結局指先などについて、最終的には口に入ることに。

 

さて、図にも「30秒程度しっかり洗いましょう」とありますが、ストップウォッチで毎回はかるわけにもいかないですよね。目安は童謡「うさぎとかめ」を、「もしもしカメよ~カメさんよ~・・・」とゆっくり2回歌うと、だいたい30秒。ぜひお子さんにと手を洗う時はいつも、「もしカメ」を2回歌いながら、楽しく洗うようにしてください。そうして習慣づけできるといいですね。

 

 

お湯+石鹸が有効。洗った後にどう乾かすかも重要。

 

 

なお、より有効なのは「お湯洗い」です。東京都福祉保健局の手洗い実験でも、水よりお湯の方が汚れがよく落ちることが示されています。冬は寒くて、水だと手洗いもついおろそかになりがち。お湯が使えるなら、お湯+石鹸でしっかり30秒以上洗いましょう。

 

 

そして意外と油断してしまうのが、洗った後の手

 

 

今では公共の場の水道は、自動センサーで蛇口をひねらなくても水が出てくるようになっているものも増えていますが、学校などではまだまだそうはいきません。衛生的には、水を止める際に蛇口にティッシュなどを添えて、じかに触れないようにするのが理想です。

 

 

そして乾かし方です。

 

 

今年8月には、ホテルやショッピングセンターなど公共の場のトイレに設置されているハンドドライヤーが問題になりました。米コネティカット大学などの研究グループが米専門誌に、「洗った手に細菌を吹き付けることになり、不衛生ではないか」とする分析を発表し、日本でも報じられたのです。

(イメージ画像)

 

 

メーカー側も反論したり、新製品で対抗したりしていますが、グレーであることは否めません。最低限、ハンドドライヤーそのものには触れないよう注意深く使用しましょう。

 

 

医療現場では、手洗い後にペーパータオルを使用するのが普通です。感染症予防には、ご家庭でもタオルの使いまわしは止めましょう。外出時もハンカチを持って出かけ、貸し借りはしない。できれば複数回使うことも避けましょう

 

 

吐物処理に素手はNG。消毒を徹底して。

 

 

患者の便や吐いた物には大量のウイルスが含まれています。少しのウイルスで感染が拡がるため、処理の仕方は重要。間違ってしまうと、一家全員が感染という事態も少なくありません。

 

 

例えば子供が突然に室内で吐いてしまった時(ノロやロタではよくあること)、まず大事なのが、他の人の退避と、ケアする人の防衛策です。

 

 

あせって患者をどこかに移動させるのは得策ではありません。本人は吐物等で汚れているでしょうから、とっさにそのまま移動させると汚染物が広がったり、ケアする人が無防備なままで感染しがちです。

 

 

その子を残して他の人が別の部屋に移動します(最近では幼稚園や保育園でもそのように対処されているところが増えているようです)。そしてケアする人は、使い捨てのビニールやゴムの手袋をはめ、マスクをするなど、しっかり準備してから患者と接するようにしましょう。

 

 

汚物はできるだけ一ヶ所に集め、新聞紙やティッシュで十分拭き取ります。拭き取ったものはビニール袋にまとめておきます。

 

 

汚物を拭き取った後、塩素系漂白剤を薄めてティッシュ等に含ませ、十分に周囲を消毒して下さい。一般に、ノロウイルスやロタウイルスは消毒用アルコールに強く、塩素系漂白剤(ハイターやブリーチ)での消毒がより効果的です※。

※近年の研究結果では、消毒用アルコールがノロウイルスにも一定の効果があると証明されています。木材や布、紙や金属は、塩素系漂白剤を使用することで色素の漂白や金属の腐敗を招く可能性もあり、これらに対しては消毒用アルコールを使用することも有効です。

 

 

薄め具合は、約100倍に。500mlのペットボトルに塩素系漂白剤をキャップ1杯(5cc)と水を入れると、おおよそ100倍になります。薄めると効果が落ちやすいので、作り置きはせず、作った後はすぐ使用して下さい。

 

 

さて、処理が終わったら、手袋は必ず中表になるように脱ぎ、捨てましょう。もちろんそれまで、手袋のまま色々なものを触らないように注意してください。そして、汚物と使用済み手袋の入ったビニール袋の口をよく縛り、できれば二重にして捨てましょう。

 

 

かかった人は知っていると思いますが、「たかが子供のお腹の風邪」と侮れないのがウイルス性胃腸炎。しっかり自衛することで、家族を守りケアすることもできると心得ておいてくださいね。

 

ナビタスクリニック立川 院長 細田和孝

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