胃腸炎が徐々に流行しはじめています。特効薬がないので、いずれにしても家庭でのケアが大切。ポイントをまとめておきます。
【まとめ】
☆2大原因ウイルスのノロとロタ。ノロの方が先に流行する傾向。しばらくは何も食べさせなくてかまいません。水分補給だけはしっかり。
☆こんな脱水の兆候があったら受診を。ただし、点滴はほぼほぼ水。経口補水液の方が本当は効率よく水分補給できます。
☆吐き気止めには、ナウゼリンか五苓散。五苓散は通常は顆粒の飲み薬ですが、当院オリジナルの座薬もあります。
2大ウイルス性胃腸炎――ノロとロタ、症状の特徴は?
冬の2大ウイルス性胃腸炎といえば、ノロウイルスとロタウイルス。昔より季節性が薄れて年中患者さんが見られるようになってきたとはいえ、大まかな傾向としては、冬前半にノロ、後半~春にロタが流行します。
ノロの方が軽いとも言われますが、インフルエンザと同じく様々な型があるので、重症度も色々。1度かかっても複数回かかることもあります。しかもよく変異を起こすせいで、ワクチンが作れません。潜伏期間は1~2日。突然に吐き始めることが多く、その後、下痢をすることもあります。熱がほとんど出ないことも多く、数日で治ることが多いです。
ロタは、赤ちゃんが突然ミルクを吹くように吐くことが多く、便も米のとぎ汁のような下痢となって、比較的症状が重くなりがちです。熱性けいれんにも注意が必要。まれに2回かかる子もいますが、1回目が一番重症です。ただし、ご存知の方も多いと思いますが、ワクチンが出来ています。ワクチンを打ったからと言って100%予防できるわけではないのですが、1回目を軽くすることができます。
一番大事なのは水分補給。脱水の兆候があったら受診を。
どちらのウイルスでも、対処は同じ。特効薬はないので、水分を少しずつ摂りながら体を休め、様子を見るしかありません。
今は、「経口補水液」という便利なものがドラッグストアでも売られていますよね。それを少しずつ飲ませるようにしてください。通常のスポーツドリンクは、糖分が多いわりに塩分が足りません。冷たいものだと腸を刺激して下痢や腹痛が悪化するため、できれば体温程度(38℃くらい)に温めたもの、すくなくとも常温のものをお勧めします。
食事は、嘔吐や下痢が強いときは、全くとらなくても大丈夫です。
特に、子供は吐いてしまうと、いったんスッキリして10分程度は元気になります。そしてお腹が空いた、と食べたがる子も多いのですが、ここでいきなり食べさせてはいけません。またすぐに気分が悪くなって吐くことも。十分に様子を見て、嘔吐が治まったと判断できたら、消化の良い食べ物から少しずつ食事再開して下さい。
レトルトのおかゆをストックしておくと便利です。軟らかく煮たうどん、豆腐とよく煮た大根(ニンジンキャベツなど、繊維質でない野菜)の味噌汁、リンゴなどもいいでしょう。
一方、肉類や揚げ物等、脂っこいものはNG。消化に時間がかかり胃腸に負担がかかるので控えましょう。
食事は登園・登校の大事な目安でもあります。熱が下がったから、もう吐かないから、というのでなく、普段通りの食事がしっかりとれるかどうか、で判断してください。そうでなければ体力が持ちませんし、結局、体調を崩して早退することになってしまいかねません。
当院オリジナルの吐き気止め座薬(漢方)もあります
繰り返し吐く、水分を摂るたびに吐く、水分を摂れない、おしっこが半日以上出ていない、顔色が悪い、指の爪を押して離した時に赤みが戻るのに時間がかかる、と言った場合は、脱水を心配する必要があります。
水分補給させられない状態が続くのはよくないので、こうした場合は受診させましょう。様子を見ながら経口補水液を飲ませる指導が基本にはなりますが、場合によっては点滴となります。
ただし点滴は、ほぼほぼただの水分です。それこそ経口補水液と同じ。だったら、点滴よりも本当は口から飲む方がずっと効率的です。点滴なら子供は2時間かけて200cc、ゆっくりゆっくり落としていきます。2時間かけて、500mLのペットボトル1本分より少ない量しか摂れないのです。
さて、水分を摂れるようにするためにも、吐き気止めの薬が処方されます。代表的なのが「ナウゼリン」。飲み薬もありますが、吐き気もあることですし、子供は座薬が使いやすいですね。副作用として、まれに下痢、錐体外路障害(筋肉のこわばり、手足のふるえなど)、眠気、発疹などがありますが、その場合は医師に相談してください。
もう一つお勧めできるのが、「五苓散」(ごれいさん)という漢方薬です。水分バランスを正常化させる効果が期待でき、吐き気や下痢の他、二日酔いなどにも使われます。
通常は顆粒のものがドラッグストアなどでも売られているのですが、お子さんの場合はナウゼリン同様、お尻から入れてあげる方がいいですよね。ご自宅でなら、ぬるま湯に溶かしたものを浣腸してあげる方法があります。
といってもなかなか難しいので、当院ではオリジナルで五苓散の座薬を薬局に依頼して作ってもらっています。受診されたら処方しますので、どうぞご相談くださいね。
ナビタスクリニック立川 院長 細田和孝