-【インタビュー】医療と福祉のキョリが遠い日本。いつも何かが起きてから、では遅い。-

2018.11.05

NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹氏のインタビュー、後編。彼らが目指す、医療と福祉の新しいカンケイとは?

 

 

【まとめ】

 

☆病児保育は医療がやるもの、という”参入障壁”。でも、目の前で困っている人がいるのに、助けない理由はない、という使命感で突き進んできた。

 

☆医療と福祉の間のキョリが遠い日本。医療側の情報が福祉側に共有されず、福祉はいつも事後的介入で、当事者の苦痛も社会の負担も大きい現状。

 

☆医療に福祉を導入し、予防的介入を! 多面的アプローチが、すべての人を笑顔に。不妊治療に代わる選択肢の1つとして、特別養子縁組にも注力。

 

 

自らを「社会問題解決集団」と位置づけるNPO法人フローレンス。これまでに「訪問型病児保育」など親子の視点に立った新たな保育事業を提供すると共に、子供を持つ女医をはじめスタッフの「働き方」改革にも積極的に取り組んできました。そのフローレンスが今、医療との福祉の新しい関係構築を目指して進み始めています。 前編に引き続き駒崎弘樹代表にお話を伺いました。(聞き手 ナビタスクリニック 堀米香奈子)

 

※前編はこちら

 

 

医療界の参入障壁。でも、困っている人を助けるのに、理由など必要ない、助けるのが使命。

 

 

――病児保育というと、医療機関が併設しているもの、というイメージもまだありますが、参入障壁などはなかったのでしょうか?

 

 

正直、その点では苦労してきた面はあります。病児保育は医療者がやるもの、と思っている人は少なくなく、医療界の方々も例外ではありません。その立場からすれば、いわば私たちは部外者。言われのない誹謗中傷を受けたこともあります。

 

 

でも、現実に困っている人がいるんです。目の前で困っている人がいるのに、助けない理由はありません

(イメージ画像)

 

 

そういう意味では、ナビタスクリニックの久住理事長には、ここぞという時に背中を押してもらいましたね。正直、“部外者”の目からすれば排他的に映る医療界にあって、久住理事長は医師を特権階級に置かない、珍しい医師です。今、一緒に反「反ワクチン運動」もやらせてもらっていますが、多くの医師が、知っていても「我関せず」で沈黙する中、久住医師はエビデンスを地道に提示しつつ、揺るがない。医師としての大事な部分を堅持しつつ、イノベーターでもある。子育て中の女医さんが働きやすい時短クリニックを開設するにあたっても、医療界の人間でない私たちが前に進む勇気をくれました。

 

 

私もディスられようが、根拠のない噂を立てられようが、粛々と地道にやっていこう、とますます思えるようになりました。困っている人を助けるのに、理由など必要ない、助けるのが使命、とブレずに思えたから、今までやってこられました。

 

 

医療と福祉の間が遠すぎる日本。福祉側に連絡が入るのは、いつも「何か」が起きてから。それでは遅い。

 

 

――確かにフローレンスの事業は、保育と医療の間を埋めるものも多いですね。需要があるのに、的確な供給がなかった部分、というか。

 

 

端的に言って、日本は医療と福祉の間が遠すぎますそれによって解決できる問題が見過ごされ、放置されているのです。私たちは見過ごさないだけです。

 

 

例えば、医学・医療の発達により、500gの超未熟児も生存が可能な時代になっていますが、問題はその後です。医療デバイスと共に生きねばなりませんが、病気ではないのでずっと入院はできない親は24時間ケアしなければならず、失業します。

(Shutterstock)

 

 

当然、福祉との連携が必須なはずですが、現実には医療側は、あくまで医学的に介入ができるところまでを仕事としています

 

 

――診察室や病室の外に出てから、むしろそこから人生は続いて行くんですよね。

 

 

そうです。周産期医療だけではありません。子供の貧困や虐待に、医療はもっとコミットしてほしい。子供の貧困や虐待が常態化していれば、小児科医は体を診れば察しがつくものです。精神科もです。子供の貧困や虐待の背景に、親の精神疾患が隠れていることもあります。治療を受けていれば精神科で把握しているわけですから、子供の虐待リスクを認識できることになります。

 

 

しかし現実には、そうした医療側の情報は福祉側に共有されていません把握されていながら、利用されていないのです。福祉側に連絡が入るのは、いつも「何か」が起きてから。それでは遅いのです。

 

 

福祉を医療に導入し、予防的介入を! 内側の常識に縛られず、選択肢としての特別養子縁組にも注力。

 

 

――医療と福祉が近づくために、どんな方策が考えられるでしょうか?

 

 

まず、医学部の教育に是非、福祉を導入していただきたいですね。医師は、患者の病気を治すだけでなく、人生や社会への処方箋を提示するソーシャルワーカーになれるはずです。

 

 

その際、医療も福祉も、パラダイムシフトが必要です。現在のように事態が悪化してからの介入では、社会的コストも高くつき、患者側も不幸です。これからの医療と福祉に期待することは、予防的アプローチです。

 

 

そのために、患者のカルテをデータベース化し、医療と福祉で共有し、連携する必要があります。そこは是非、行政にもリーダーシップを発揮してほしいですね。

 

 

――子育てや児童福祉の問題を解決するには、その内側だけ見て手を差し伸べればよいわけではないんですね。

 

 

フローレンスのミッションは、親子の笑顔を妨げる社会問題の解決です。それには、内側の常識に縛られていては無理ですし、多方向からのアプローチが必要です。

 

 

例えば2016年からは、「赤ちゃん縁組」(特別養子縁組)にも力を入れています。望まない妊娠・出産の果てに虐待をしてしまう女性がいる一方、世の中には不妊に悩むカップルが大勢います。特別養子縁組は、赤ちゃんも、生みの親も、育ての親も、みんなが笑顔になれるシステムです。

 

 

米国では、不妊治療の前に、選択肢として特別養子縁組が提示され、きちんと説明を受けます。女性の年齢から見た妊娠可能性とそれにかかるコストはこれくらい、一方、特別養子縁組のコストはこれくらい、どうしますか? といった具合です。児童福祉が医療の現場に入り込んでいるんです。

(Shutterstock)

 

 

日本でも医療と福祉の距離を近づけたい。これからも声を上げつつ、実行していきます。

 

 

駒崎弘樹(こまざき・ひろき)

認定NPO法人フローレンス 代表理事

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