食欲の秋、油断するとあっと言う間に太りそうですが、だからと言って体重維持のためにわざわざジムに通う必要はなさそうですよ。
【まとめ】
☆週1回1時間の運動より、こま切れにたくさん体を動かす方が、より多く脂肪燃焼。
☆ 「運動開始から20分以上たたないと脂肪は燃えない」はウソ!
☆インスリンの血中値を上手に下げよう。空腹時の運動の落とし穴に注意!
週1回のランニングやジムより、家のすみずみまで毎日掃除しよう!
これはべつに、週1回のランニングやジムは意味がないとか、やめた方がいいと言っているわけではないのです。それぞれ健康効果は得られることでしょう。ただ、太らない=体重維持のためには、長時間だけど少ない回数運動するより、断続的にこまめに運動した方が、より多くの脂肪を燃やせることがわかっています。
これは、9人の被験者が2泊3日の間、特殊な部屋にこもりっきりになって行われた実験で導かれた結論です。エアロバイクを決められた時間漕ぎ、あとは普通に室内で過ごす実験で、たえず室内の空気が採取され、吐いた息の成分から糖質と脂質の利用割合が解析されました。
すると、1日に2回、40分と45分ずつ運動した場合より、5分運動して30分休んで、を17回繰り返した方が、脂質の燃焼割合が多くなったのです。
ですから、週に1回1時間ジムなどでまとめて運動して、後は毎日座りっぱなし、というくらいなら、例えば掃除など体を使う家事にいそしむなど、ちょくちょく、こまめに動いているほうが実はオススメ。脂肪を効率的に消費できます。
「脂肪は運動開始後20分以降に燃焼し始める」はデマです。
でも、「脂肪は運動を始めてから20分以上たってようやく燃え始める」ってどこかで聞いたことあるけど、という人。であればたしかに、短時間ずつたくさん動いても脂肪燃焼効果なんて期待できないはずですよね。
ご心配なく。これは誤った情報としか考えられません。
その発端も、見当がついています。2000年に国内で発表されたとある論文です(こちら)。「朝食前の空腹時と、朝食2時間後、昼食2時間後、どの時間帯に運動すると脂肪がよく燃えるか」という実験を行ったところ、昼食後に運動したグループの脂肪燃焼量が、運動開始から25分を過ぎてから増えたのです。この現象だけを見て、誰かが勝手に解釈し、誤った情報が独り歩きを始めたと見られます。
この論文には、運動開始から一定時間を過ぎないと脂肪が燃えないなどとは、一言も書かれていません。
それどころか、データをちゃんと見ると、朝食後や昼食後に運動したグループよりも、朝食前の空腹時に運動したグループの方が、少なくとも運動開始後30分までは、一貫して脂肪が効率よく燃えているのです。
つまり「空腹状態で短時間体を動かすと、効率よく脂肪が燃やせる」というのが、この実験から言える1つの正しい結論なのです。
空腹時の運動が効果的な理由。でも、食欲アップの落とし穴が・・・。
お腹が空いている時に運動すると、なぜ脂肪が良く燃えるのでしょうか。
単純に考えれば、お腹がいっぱい=血糖値が高い(これについては、先日のブログをご参照ください)状態だからです。血中に糖がたくさんあれば、それをエネルギー源として使うのが手っ取り早いめ、わざわざ脂肪を燃焼するまでもありません。
さらに丁寧に言うなら、血中のインスリン値の話になります。
先日もちょろっと書いたように、インスリンは体に脂肪を蓄えさせようとするホルモン。血糖値が上がったことを察知した脳が、分泌を促します。つまり、食後の血糖値が高いうちは、インスリンが大量に血中を巡って中性脂肪の分解を邪魔するので、脂肪はなかなか燃えないのです。
逆に、インスリンのあまり出ていない空腹時に体を動かせば、心おきなく脂肪をエネルギー源として消費できる、というわけです。
ただし、落とし穴もあります。空腹時でも血糖値がゼロになるわけではなく、運動には血中の糖も使われます。ただでさえ血糖値が低いところに、さらに糖を消費して血糖値を下げるとどうなるでしょう? 血糖値が下がる=お腹が空く、ということですから、いつもより早くお腹が空き、食べ過ぎの危険があるのです。
なお、ある実験では、集中した運動やじっとしていた場合は数時間のうちに次第に空腹感が高まったのに対し、こま切れに体を動かした場合は空腹感がほとんど高まらなかった、という結果も出ています。
ですから結局、空腹時に集中して運動をするよりも、朝から晩までちょくちょく体を動かしていた方が、無理なく脂肪燃焼でき、ドカ食いも避けられて賢明と言えそうです。
ぜひご自身のライフスタイルを見直して、こまめに立ち上がって体を動かす生活に切り換えて行きましょう!