-予防接種で失神?ーーめったにない、あってもたぶんワクチンのせいではありません。-

2018.10.17

インフルエンザ流行前夜、予防接種の時期ですね。ただ、インフルに限らず予防接種には副反応にまつわる誤解も多いようです。その1つを解いておきましょう。

 

 

【まとめ】

☆予防接種の副反応は軽いものがほとんど、それでも「副反応が絶対に起きないワクチン」はありません。

 

☆ごくごくまれに起きる重い副反応は、主に生ワクチンによる感染か、アレルギーによるもの(アナフィラキシー)。

 

☆さらにまれに、予防接種後に失神やけいれんなどが起きることも。ただし、ワクチンの副反応でなく、注射の恐怖や痛みからくる脳貧血と見られます。

 

 

 

予防接種にごく軽い副反応はつきもの。それでもメリットが上回ります。

 

 

病気から身を守るのに予防接種が非常に有効な手段であることは、歴史的にも証明されていること。しかし、たしかに効かない場合もあったりして、打つ必要があるの? と疑問を持たれてしまうこともあります。先日取り上げたインフルエンザワクチンはその代表例でした(詳しくはこちら)。

 

 

打つべきかどうか、迷ってしまうもう一つの理由が、副反応の心配かもしれません。

 

 

打った部位が赤く腫れて熱を持ったり、かゆくなったり、といった程度の軽いものを含めれば、副反応の絶対に起きない予防接種はありません。副作用が絶対に起きない薬はない、というのと同じです。

 

 

それでもワクチンを打つのは、そうしたデメリットをはるかに上回るメリットがあるから。病気にかかりたい人、子供にかかってほしい人はいませんよね。

 

 

ただし問題は、想像以上の副反応が出た場合。予防接種は健康な人が病気を予防するために打つので、薬の副作用以上に受け入れがたいということです。他方、薬は、体調が悪い人が他に頼る手段がなく、副作用を覚悟の上で使われることも多いものです。

 

 

そもそも、ワクチンの副反応ってどういうもの?

 

 

予防接種の副反応でよく見られるのは、熱が出たり、機嫌が悪くなったり、打った部位が赤く腫れたり、かゆくなったり、しこりになったり、というもの。経験がある人の方が多いのでは? その程度なら想定の範囲内として問題にはなりません。

 

 

ところが稀に、それ以上の副反応を起こすことがあります。

 

 

1つは、生ワクチンの場合。感染力を弱めたものとはいえ、生きているウイルスを体内に入れるため、感染リスクがゼロとは言えません

 

 

例えばBCGでは、稀に全身にBCG菌が広がることがあります。結核の治療でおさまりますが、遺伝的背景があるとも言われます。

 

 

また、おたふく風邪なども、わずかながら無菌性髄膜炎のリスクがあります(2000人に1人)。それでも、ワクチンを打たないでおたふく風邪にかかれば100人に2人が無菌性髄膜炎を発症すると見られます。また、ワクチンによる無菌性髄膜炎は多くの場合、短期入院か外来治療で済む程度の軽症。そのため、先の通りメリットの方が上回る、という考え方なのです。

 

 

ちなみに生ポリオワクチンは、予防効果は非常に高いもののポリオを発症する恐れがあったため、2012年9月から発病の心配のない不活化ワクチンに切り替わっています。

 

 

もう1つの重い副反応は、アナフィラキシーです。

 

 

アナフィラキシーとは、症状の激しいアレルギー反応のこと。血圧が低下し、呼吸が苦しくなったり、意識消失が薄れたりして、死亡することもあります。ただしワクチンに限らず、日常の他の医薬品・食品等、ほとんどの物質で起切る可能性がありますし、ワクチンで突然に起こる確率は極めてまれです。

(Aaron Amat/shutterstock)

 

とはいえ、それまでアレルギーを起こさなかった物質に対して突然起きることもあるので、予測はほぼ無理(ただし、以前にアナフィラキシーを起こしたことがある物質では再び起きる可能性が高いため、避け続ける必要があります)。体内に入ってから24時間以内、たいていは30分以内に起こります。

 

 

予防接種後に待合室やその近くで30分程度過ごすように言われるのは、その用心のためです。ごくごく稀とはいえ、保護者の方は注意深く観察し、ぐったりしているなど何か異常があったらただちに医療機関を受診してください。

 

 

失神? 原因はたぶんワクチンじゃない。つまり副反応でなくて「脳貧血」かも。

 

 

一方、ワクチンによる副反応に見えて、実はそうではない場合もあります。

 

 

HPVワクチン騒動」をご存じでしょうか。HPVワクチンは、子宮頸がんを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐもの。接種した10代の少女たちに、失神や運動障害、知覚障害などの深刻な副反応が多発した、と報道され、厚労省が接種の積極的な奨励を取り下げたものです。

 

 

ところが、こうした失神などの異変がHPVワクチン自体によるものだとする考え方は、すでに科学的に否定されているのです(論文はこちら)。それでも今なお接種率の低下が深刻で、今後50年で、本来は救えたはずの子宮頸がんによる死者が2万人超に上るとも言われています。

 

 

では、どうして失神などの異変が起きたのでしょうか?

 

 

これは、専門的には、「血管迷走神経反射」と考えられます。ワクチンのせいではなく注射の痛みや恐怖によって引き起こされた反応ということです。

 

 

血管迷走神経反射では、過度のストレスや強い痛み、恐怖心などによって迷走神経が刺激され、末梢の血管が拡張し、血圧が低下して脳に十分な血液が送られなくなります。血の気が引き、冷や汗が出て、目の前が暗くなったり、吐き気や腹部の違和感を覚えたり、さらには失神してしまうことも。

 

 

いわゆる「脳貧血」状態になるのです。

 

 

このことは、ワクチンの説明書き(添付文書)にも書かれていること。

 

 

メーカー側はさらに、

 

「特に若い女性は、注射による血管迷走神経反射によって失神や転倒を起こす可能性があります」

 

「接種後に失神、失神寸前の状態、意識消失、神経原性ショックなどが報告されており、その中には失神後に転倒し打撲、コブができる等の報告もございました。過去に注射によって気分が悪くなった経験がある人や接種前に緊張しているような人については、臥位で接種することもご考慮ください」

 

と、医療関係者にも文書で注意喚起しています。脳貧血なので、横になった状態(=臥位)で接種すれば頭への血流が滞らず、予防できるのです。

 

 

これに対し、「予防接種を受けると失神する」といったウワサを聞いて過剰に怖がると、誘発されやすくなると考えられます。少女たちが接種後に次々と失神などの重い症状に見舞われたのも、そうした集団生活心理が働き、発症と恐怖感の悪循環に陥ったためかもしれません。

 

 

大事なのは、予防接種やその副反応について正しく理解し、むやみに怖がらないこと。大人がまず冷静に情報を判断し、子供たちに予防接種の機会を確保してあげることが必要ですね。

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