-【日経トレンディネット掲載】緊急避妊薬(アフターピル)のオンライン処方に踏み切った理由-

2018.10.05

ナビタスクリニック新宿が緊急避妊薬のオンライン処方に踏み切った理由について、理事長の久住英二医師が日経トレンディネットの取材に応えました。本日(2108/10/05)掲載です。

 

※日経トレンディネットの記事はこちら(トップ写真も)

 

 

【まとめ】

☆ナビタスクリニックでは以前から内科でアフターピルを処方。希望者は年間1000人程。ニーズの高さを診療の現場で実感しています。

 

☆もともと触診さえ必要なく、対面診療である必要性はほとんどありません。心理面でのハードルを下げ、緊急に入手することを重視すれば、オンライン処方は妥当であり、適切です。

 

☆必要とする人に届ける理由があり、方法があるなら、実施するのが医師としての職業倫理上の判断。女性の生き方を左右する重要な問題だからこそ。

 

 

 

賛否両論ある中で、オンライン処方を続ける理由

 

 

今年9月1日からナビタスクリニック新宿が行っている、緊急避妊薬(アフターピル)のオンライン処方。スマホアプリを使って予約を取ると、指定時間にコールがかかり診療が始まります。それまでにウェブ問診票を記入していただくことで、診療時間も短縮できます(詳しくはこちら)。

 

 

今回、オンライン処方に踏み切ったのは、必要があってもすぐに産婦人科に駆けつけられない女性たちのため。これに対し、厚生労働省は「原則、初診は対面診療が必要」等の考えを理由に不適切な可能性を指摘しているようです。それでもナビタスクリニック新宿ではオンライン処方を継続しています。

 

 

もちろん、「適切」と判断するだけの合理的な理由があってのこと

 

 

すでにこのブログで何度も取り上げていますので、ご理解いただいている方も多いかと思いますが、今回の記事を含め、改めてまとめておきます。

 

 

1.ニーズの高さ(必要性)

 

 

ナビタスクリニックでは産婦人科を標榜しているわけではありませんが、アフターピルについて知識のある医師がいれば、法的にも実質的にも処方は可能。そのため以前から各院内に常備して、内科で処方してきました。

 

実際、年間1000件ほどアフターピル希望の受診があり、アフターピル自体のニーズの高さは担当の医師も実感してきました。

 

 

ただ、誰もが避妊失敗後すぐに受診できるわけではありませんよね。仕事や学校、毎日の生活があります。週末夜の出来事であれば、受診のチャンスは月曜日のみ。しかし週明けの忙しい中、受診のために何時間も自由にできる人はそう多くはないでしょう。オンライン処方であれば、本人がどこにいてもよいわけですから、合間を縫って時間を作ることが可能。移動時間も待ち時間もありません緊急性が高いからこそオンライン処方がお役に立てるのです。

 

 

特に地方では産婦人科が少なく、遠方まで簡単に受診できるとは限りません。のみならず、人々のプライバシーに対する意識も都会とは異なります。産婦人科に1回足を運んだだけでも様々な噂や憶測が瞬く間に広がることもあるようです。アフターピルを入手するハードルも、より高いに違いありません。スマホ診療でアフターピルを処方することには、その点でもニーズがあると考えました。

 

 

2.対面診療でなければならない理由が乏しい(妥当性)

 

 

アフターピルの診療には、もちろん内診は必要ありません。触診でさえ不要ですから、診察のメインは、説明や指導が中心です。今後の避妊方法や、感染症チェックについて、コミュニケーションを図りながら、服薬指導のみでなく、ライフスタイルや健康管理にも役立ててもらえる情報を提供します。

 

 

であれば、対面診察でなければならない理由はありません

 

 

むしろ、対面でない方が、受診への心理的なハードルも下がり、迷っているうちに受診のタイミングを逃す人も減ると考えました。

 

 

たしかに厚労省の定めた「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、「原則として初診は対面診療で行い、その後も同一の医師による対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められる」との記載があります。ただ同時に、「例外として患者がすぐに適切な医療を受けられない状況にある場合など」に限っては「許容され得る」としてもいます。

 

 

アフターピルは、性交渉後、早期に服薬しなければ効果は得られません。いかに迅速に薬を届けられるかが非常に重要ですから、上記の「例外」に当たってしかるべきです。ためらっているうちに望まない妊娠をすることのダメージの大きさを考えれば、対面での診療を重視することより、入手可能性を高めることを優先させるべき、ということです。

 

 

なお、ナビタスクリニックでは、同じ観点からアフターピルの市販薬化(OTC化、くわしくはこちら)を進めるべきと考えています。

 

 

3.医師としての職業倫理

 

 

ナビタスクリニックでは以前から「ella 」というアフターピルを個人輸入して提供しています。国内未承認ですが、WHOで推奨されている化合物の製剤です。日本で承認されているノルレボは高い、というのも理由の一つ。効果が同じであれば安いほうが良いに決まっています。さらに、ella は120時間以内に服用すれば効果があり、ノルレボの72時間より長いのです。

 

 

オンライン処方では、処方した薬を宅配便で届けます。期限が72時間(3日間)では宅配便では間に合わない可能性がありますが、120時間(5日間)あれば国内のほとんどの地域を十分カバーできますよね。

 

 

こうして、必要性も妥当性もあって、なおかつ実現するための方法も揃っています。あとは、医師としてやるかやらないか。久住医師は、「医師としては、困っている人を安全に救う手段があるなら、救うべき」と判断しました。

理事長・久住英二(日経トレンディネットより)

 

 

このように、アフターピルのオンライン処方は、様々な観点から検討を重ねた上での、医師としての職業倫理上の判断です。

 

 

今回の記事では、厚生労働省医政局医事課の担当者が、「アフターピルの処方が必要なケースの場合、レイプなど犯罪が絡む可能性も低くない。その場合、その後のケアも含めての診療が必要だ」としています。ナビタスクリニックでは、アフターケアについては、犯罪等に絡むものでなければオンライン診療の中で対応することも可能と考えていますし、診療内で事情をお伺いして犯罪が絡む場合と判断した場合には警察への相談や性感染症の検査等も必要ですから、適切な対応をご案内させていただくことになります。

 

 

また、オンライン診療はあくまで緊急性など女性のニーズを重視したものであり、対面診療を排除するものではありません。当然、レイプなどの犯罪を助長するものでもありません。

 

 

先進国では「知らないのは愚か、知らせないのは罪」とまで言われるアフターピル。日本はまだ先進国とは言えないようです。実際、避妊をするかしないかは、女性の生き方に関わる大きな問題です。であれば、避妊の方法を自らの意思で選べることが重要ですよね。しかも、その選択肢が幅広く、理不尽なハードルが排除されていなくては意味がありません。

 

 

必要とする一人でも多くの人にアフターピルを届けるために、ナビタスクリニック新宿ではオンライン処方を継続していきます。同時に、アフターピルについての議論と理解が進み、オンライン処方の拡大やOTC化への道が拓けることを期待します。

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